バイデン米大統領、議事堂襲撃1周年でトランプ氏を糾弾、議会民主党は投票権法に焦点
(米国)
ニューヨーク発
2022年01月07日
ジョー・バイデン米国大統領は1月6日、ドナルド・トランプ前大統領の支持者による連邦議会議事堂襲撃事件から1年がたったことを受け、国民向けの演説を行った。
バイデン大統領は20分超となった演説の大半を、トランプ氏および同氏に同調する共和党議員・支持者の糾弾に費やした。トランプ氏に対しては、「歴史上初めて、選挙に負けただけでなく、平和的な権力の移行を阻害しようとした」と非難した。暴動自体についても、米国を壊そうとする行為は南北戦争時にも起きなかったとし、民主主義が危機に直面していると強調した。後半では、国外でも民主主義と専制主義がせめぎ合う歴史的分岐点にあるとし、中国やロシアは、民主主義が世界の変化のスピードに対応できていないと批判している、と指摘した。バイデン大統領はそれらを踏まえた上で、民主主義の維持は困難を伴うが暗い日々は明るい未来と希望につながるとし、「1月6日が民主主義の終焉(しゅうえん)ではなく、自由とフェアプレーの再生の始まりとなるような、米国の歴史の新たな章を書いていこう」と呼び掛けた。
上院の新年最初の優先課題は投票権関連法案
また、バイデン大統領は、大統領選挙以降「州レベルで次から次へ、投票を守るのではなく妨害するような法律が書かれている」と指摘し、その動きを牽制した。これは、主に共和党が州知事や州議会を押さえている州で、ドライブスルー投票や24時間対応可能な投票所の禁止や郵便投票時の身分証明書提示の義務付けにより、投票方法を従来と比べて制限する法律が成立している動きを指している。ニューヨーク大学のブレナン司法センターのまとめによると、2021年10月時点で19の州がこの様な法律を成立させている。
こうした動きと議事堂襲撃から1周年を迎える中、上院で法案審議日程をつかさどる民主党のチャック・シューマー院内総務(ニューヨーク州)は1月3日、上院議員宛ての書簡で、今後数週間以内に、投票権に関する法案審議を進める意向を伝えた。下院では2021年中に、各州が投票方法に関する変更を行う場合、司法省からの事前承認を求める「ジョン・ルイス投票権促進法案(H.R.4)」など関連法案が可決されている。しかし、フィリバスター・ルール(注)により、実質的に60票の賛成がなければ法案を可決できない上院では、共和党議員の反対により審議入りができずにいた。シューマー院内総務は、共和党が協力しない場合は、1月17日までに同ルールの変更を検討するとしている。しかし、政権の目玉政策であるビルド・バック・ベター法案にも反対を表明している民主党内保守派のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州、2021年12月23日記事参照)は1月4日、同ルールの変更にも難色を示している(政治専門誌「ザ・ヒル」1月4日)。
(注)上院では通常、法案可決にはフィリバスター(議事妨害)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となる。ただし、同ルールは上院の単純過半数で変更が可能となっている。
(磯部真一)
(米国)
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