米12月の非農業部門雇用者数、19.9万人増の低水準も失業率は3.9%に低下、2カ月連続の大幅改善
(米国)
ニューヨーク発
2022年01月11日
米国労働省が1月7日に発表した2021年12月の非農業部門の雇用者数は前月から19万9,000人増で、市場予想(42万2,000人増)を大きく下回った。しかし、失業者数が前月から48万3,000人減少し、就業者数も65万1,000人増加したことにより、失業率は3.9%〔添付資料「図 失業率の推移」、「表1 米国の雇用統計(12月速報)」参照〕と、前月(4.2%)より大幅に改善した(市場予想は4.1%)。なお、11月の非農業部門の雇用統計は2021年12月6日記事参照。
失業者のうち、一時解雇を理由とする失業者数は前月(87万5,000人)より6万3,000人減少して81万2,000人、恒常的な失業者数も前月(190万5,000人)より20万2,000人減少して170万3,000人となった。
労働参加率(注)は前月と同じ61.9%だった。12月の労働力人口は前月から16万8,000人増加した。
平均時給は31.31ドル(11月:31.12ドル)と、前月比0.6%増(11月:0.4%増)、前年同月比4.7%増(11月:5.1%増)と引き続き高水準で推移している(添付資料表1参照)。
12月の非農業部門雇用者数の前月差は19万9,000人増と前月の増加幅(24万9,000人増)から縮小。前月からの雇用増減の内訳をみると、民間部門は21万1,000人増で、そのうち財部門が5万4,000人増、製造業は2万6,000人増、建設業は2万2,000人増だった。サービス部門は15万7,000人増で、娯楽・接客業5万3,000人増、対事業所サービス4万3,000人増、教育・医療サービス1万人増など全般的に低調だった。また、小売業は2,100人減と2カ月連続の減少、政府部門は1万2,000人減と5カ月連続で減少した(添付資料表2参照)。
人種別の雇用状況について、12月のそれぞれの失業率は、白人3.2%(前月3.7%)、アジア系3.8%(前月3.9%)、ヒスパニック・ラテン系4.9%(前月5.2%)が回復する一方、黒人7.1%(前月6.5%)で唯一大幅に悪化している。
12月の雇用者数は低水準だったものの、失業率が大幅に低下し、平均時給が高止まりしている状況から、労働力が引き続き逼迫している状況がうかがえる結果となった。別の統計である労働省の雇用動態調査では、11月の自発的離職者数が約450万人と調査開始以来の最高となり、特に宿泊・飲食サービスが15万9,000人増と最も多くなっている。「新型コロナ禍」の中で、待遇や感染リスクなど考慮して人々がより良い条件の仕事を探している状況がうかがえる。
連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和策の縮小(テーパリング)を既に開始しており、3月末にその終了が予定されているが、その後の政策金利引き上げは年内3回というのが連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の多数意見となっている(2021年12月17日記事参照)。1月5日に公表された前回のFOMCの議事要旨では、インフレなどの状況を踏まえるとこれまでの想定よりも早く政策金利を引き上げる必要があることや、金利の引き上げ後すぐにFRBの保有資産の圧縮(市場への売却など)を進める必要があることなどが議論になったとされる。今回の雇用統計でも引き続き高い賃金上昇が確認されたことから、こうしたFRBの政策の方向性をさらに強化するものと考えられる。
(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。
(宮野慶太)
(米国)
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