1月中の石炭輸出を禁止、日本への供給にも影響か

(インドネシア)

ジャカルタ発

2022年01月07日

インドネシアのエネルギー・鉱物資源省は1月1日、1月中の石炭の輸出を禁止する旨を発表した。同措置は同国の石炭火力発電所への供給量を確保することが目的で、政府高官は「国内の発電所への石炭の供給が滞れば、広範囲な停電が起こる可能性がある」と懸念を示す(「ジャカルタ・グローブ」紙1月2日)。

同省は、大臣決定139.K/HK.02/MEM.B/2021で、国内で採掘した石炭の25%を1トン当たり70ドルで国内需要に回すよう、各石炭採掘企業に国内供給義務(DMO)を課している。今回の禁輸措置はDMOを順守しない企業行動により、石炭火力発電所の在庫数量が極端に少なくなったことが原因の1つとみられる。ジョコ・ウィドド大統領は「DMOはいかなる理由であっても違反してはならない」とし、DMOを順守できない企業に対して輸出禁止や事業許可の剥奪を行う可能性を示唆している(「ジャカルタ・ポスト」紙1月5日)。

一方で、国外市場での石炭価格は1トン当たり150ドルを超えている。アリフィン・タスリフ・エネルギー・鉱物資源相は、今回の供給不足とDMOを順守しない企業行動の原因は、(国内に比べて販売価格が高い)国際市場の石炭価格のためである可能性が高いとしている。インドネシア石炭企業協会の会長であるパンドゥ・スジャリル氏は、供給不足の根本的な解決のため、DMOの比率を国内需要に合わせて調整すること、DMOで設定された石炭価格を市場価格まで引き上げることが必要だ、とした(「CNBCインドネシア」1月5日)。

日本大使館がインドネシア政府に要望書を提出

2020年に日本がインドネシアから輸入した石炭の輸入額は、21億1,700万ドルで、対インドネシア輸入額全体の13.7%を占める(グローバル・トレード・アトラス)。国別でも、首位のオーストラリアに続く。今般の禁輸措置に対し、ロイター通信(1月5日)によると、在インドネシア日本大使館は同省宛てに書面を提出し、「突然の輸出禁止は日本国内の経済活動に重大な影響を及ぼす」と輸出禁止措置の撤廃を求めた。加えて、石炭の積込みを終え停泊している5隻の輸送船に出発許可を出すよう要望している。

国営電力企業のPerusahaan Listrik Negara(PLN)は1月4日、政府の禁輸措置により供給不足の問題は解決し始めている、との声明を発表しており、今後の状況に注視が必要だ(「ジャカルタ・グローブ」紙1月5日)。

(尾崎航)

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