英国がシンガポールとのデジタル経済協定に原則合意、交渉開始から半年
(英国、シンガポール)
ロンドン発
2021年12月16日
英国政府は12月9日、シンガポールとデジタル経済協定(DEA)に原則合意したことを発表した。政府によると、デジタル分野に焦点を当てた貿易協定への署名は欧州の中で英国が初めてとなり、6月28日の交渉開始(2021年7月1日記事参照)から6カ月たらずでの合意となった。
同協定により、電子コンテンツ販売への関税を課さないことや、電子署名や電子契約などの貿易管理文書の電子化などデジタル化促進にコミットするほか、個人データ保護の促進を図る(DEA解説参照)。また、金融サービス分野でも、フィンテックやレグテック(注1)など革新的な金融サービスで協力していくとした。加えて、サイバーセキュリティ、デジタルアイデンティティ(注2)、貿易のデジタル化促進の3分野につき覚書(MoU)を締結するとしている。
政府は、同協定の経済効果を1,510億ポンド(約22兆6,500億円、1ポンド=約150円)と試算している。また、2020年に160億ポンド相当の経済的価値を生み出したシンガポールとの貿易関係を次の段階に引き上げ、英国企業のシンガポールおよびアジア市場への新たな進出機会の創出にもつながるとしている。
アン・マリー・トレビリアン国際通商相は今般の協定に関して、「英国企業を、世界で最大かつ最も急速に成長している市場に結びつけるための画期的な協定だ」と評価した。また、英国のビジネスに合わせて貿易ルールを見直すことで、データフローの改善やサイバーセキュリティの強化、両国のハイテク・ハブとサービス・ハブの連携強化など、多くのメリットが享受できるとしている。
英国の産業界からも、歓迎の声が上がっている。Teck UKのジュリアン・デイビッド最高経営責任者(CEO)は「DEAは、テックとデジタルに関する重要な2国間協力のための強力なプラットフォームを提供し、新たな問題に対する共通のアプローチの構築を可能にする」と協定の原則合意を評価した。
(注1)規制(Regulation)と技術(Technology)を組み合わせた用語。
(注2)デジタルで管理された個人の属性情報。
(尾崎翔太)
(英国、シンガポール)
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