欧州医薬品庁、新型コロナワクチンのブースター接種でファイザー製使用を勧告
(EU)
ブリュッセル発
2021年10月05日
EUの医薬品規制当局である欧州医薬品庁(EMA)は10月4日、新型コロナウイルスのワクチン接種完了者に対する3回目の接種となるブースター接種に関して、初となる勧告を発表した。
それによると、2回目の接種から最低でも6カ月が経過した18歳以上を対象に、米国ファイザーとドイツのビオンテックが開発したワクチンを使用したブースター接種を検討することができるとした。ただし、EMAと欧州疾病予防管理センター(ECDC)は既に、免疫不全などの症状のない一般人に対するブースター接種については、緊急の必要性はないとの中間報告書を発表しており(2021年9月3日記事参照)、今回の発表は必ずしもブースター接種を推奨するものではないとみられる。今回の発表でEMAは、ブースター接種の実施の可否を判断するのはEU加盟国とし、加盟国は必要に応じてブースター接種を推奨することができると述べるにとどまっている。なお、EMAは現在、米国モデルナ製ワクチンについても、ブースター接種に関する申請を審査している。
また、ブースター接種とは別に、免疫機能の低下により2回目を接種しても十分な免疫反応が得られていない人に対する「追加接種」に関しては、ファイザー・ビオンテックとモデルナの両ワクチンの使用を可能とする勧告を行った。免疫機能が著しく低下している人を対象に、2回目の接種から28日目以降に追加接種を実施することができるとした。
一部加盟国でブースター接種開始、東欧諸国を中心に低い接種率が課題
ECDCの9月23日の発表によると、イタリアやスペインを含む11のEU加盟国で追加接種の勧告が出ており、ドイツやフランスを含む9加盟国では、追加接種に加えて、高齢者などの一部市民を対象にしたブースター接種を推奨する勧告が出ている。さらに6加盟国で、追加接種ないしブースター接種の実施に向けた検討が進んでいる。
このように、一部の加盟国ではブースター接種が開始されつつあるが、EUの全人口における通常の指定回数のワクチン接種完了者は10月4日時点で62.3%にとどまっており、加盟国間の格差も大きい。ポルトガルでは全人口のワクチン接種完了率が79.4%に達する一方で、ブルガリアでは19.2%にとどまるなど、東欧諸国を中心に接種率がEU平均を下回っている。
また、ECDCは9月30日の発表で、接種率がEU平均と同等あるいは下回っている加盟国が、マスク着用や社会的距離の確保など医薬品以外による公衆衛生対策を緩和した場合、今後11月末までに新規感染者や入院者、死亡者数が急増する可能性が高いとの懸念を示している。ECDCはこうした状況を踏まえて、公衆衛生対策を維持するとともに、引き続きワクチン接種を推進することを推奨している。
(吉沼啓介)
(EU)
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