英国とノルウェー間の海底送電線、商業運転開始
(英国、ノルウェー)
ロンドン発
2021年10月06日
英国の送電大手ナショナルグリッドは10月1日、ノルウェーとの間で送電を行う国際連系線ノースシーリンク(North Sea Link)が商業運転を開始したことを発表した。同連系線は同社と共同出資したノルウェーの系統運用者のスタットネットが所有する。
同連系線は、イングランド北部のノーサンバーランド州ブライスとノルウェー南西部スタバンゲル近郊の村クビルダルを結ぶ電圧525kV(キロボルト)の海底電力ケーブル。同連系線の全長は世界最長の約450マイル(約720キロ)で、建設費は約16億ユーロ、建設には6年を要した。
同日から送電容量700メガワット(MW)で運用を開始、3カ月かけて徐々に最大送電容量の1,400MWまで増やし英国の140万世帯へ電力を供給する。
同連系線によって、英国で風力発電の発電量が多く電力需要が低いときには、再生可能エネルギー由来の電力を英国からノルウェーに輸出し、ノルウェーの水力発電用の貯水量を節約することができる。一方、英国の電力需要が高く、風力発電の発電量が少ない場合には、ノルウェーから水力発電由来の電力を輸入し、英国の消費者へ安価で安定したクリーンな電力を供給できる。両国間の再生可能エネルギーの取引を可能にすることで、英国での化石燃料の燃焼を減らし、2030年までに二酸化炭素(CO2)2,300万トンの排出を抑制することができるという。
同社は既にベルギー、フランス(2カ所)、オランダとも国際連系線を接続しており、今回のノースシーリンクは5番目となる(添付資料図参照)。
英国政府は2020年12月に発表したエネルギー白書(2020年12月18日記事参照)で、国際連系線による送電容量を2030年までに少なくとも18ギガワット(GW)まで拡大することを計画している。
フランスとの国際連系線で火災発生
ナショナルグリッドは9月15日、イングランド南東部ケント州の送電施設で火災が発生し、フランスとの国際連系線IFA(送電容量2GW)のうち1GWが送電停止となったことを発表した。復旧は2022年3月27日となる見通し。また、保守作業のため計画停止中だった片回線1GWも、9月17日から運用再開予定だったが、火災の影響から10月23日まで延長された。
また、ナショナルグリッドは9月16日、2021年に運転開始したフランスとのもう1つの国際連携線IFA2(送電容量1GW)、オランダとのブリットネッド(BritNed、1GW)、ベルギーとのネモリンク(Nemo Link、1GW)という3つの連系線が現在フル稼働していると発表。IFAの火災の影響を受けて欧州各国と協議し、これら連系線への冬期前の停止計画を調整し、英国への安定供給を図るとした。
英国では9月以降、ガス価格の高騰により(2021年9月28日記事参照)、電力価格も上昇しており、今回の設備被害による影響が懸念されている。
(宮口祐貴)
(英国、ノルウェー)
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