米下院、2022年12月まで債務上限を凍結する法案可決、つなぎ予算と一体化
(米国)
ニューヨーク発
2021年09月22日
米国議会下院は9月21日、連邦政府による債務借り入れが停止されている現状を踏まえ(2021年7月26日記事参照)、2022年12月16日まで債務上限を一時凍結させる法案を、賛成220票、反対211票と民主党の賛成多数で可決した。同法案は、連邦政府から要請のあった2022年度つなぎ予算(2021年9月8日記事参照)と一体化されている。つなぎ予算は、2021年12月3日までの連邦政府の資金需要に対応するものとして、政府機関のサービス継続費用に加えて、自然災害による被災者支援やアフガニスタンからの出国者支援の費用を含む。
今回の法案の可決に先立ち、9月20日にはチャック・シューマー上院院内総務(ニューヨーク州)とナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州)が、法案の成立を目指すとの声明を連名で発表していた。両氏は、債務上限引き上げについて、2020年12月にトランプ前共和党政権が成立させた新型コロナウイルス対策(2020年12月24日、2021年1月4日記事参照)によって発生している債務にも対応するものだとして、超党派の支持を訴えた。
一方、共和党のミッチ・マコーネル上院少数党院内総務(ケンタッキー州)は、議会に債務上限問題に速やかに対応するよう求めたジャネット・イエレン財務長官からの要請に対して、同問題については民主党単独で対応するべき、と返答している。米国政府の債務残高は既に過去最高の水準にあり(2021年7月6日記事参照)、野放図な債務膨張を懸念する声もある。そうした批判をかわすために、民主党としては共和党とともに対応したい意向だが、共和党の支持を得るのは現時点では難しい状況にあり、調整が難航している。
債務の新規借り入れが停止している現在、財務省は手元資金により当面の資金繰りを行っているが、イエレン長官はその手元資金が「10月中にも尽きる」と予測している。同長官は、仮に手元資金が尽き、債務支払いが遅延などした場合、過去の経験から米国債の信用格付けに悪影響を与え、米国経済および世界経済に大きな損失を与える可能性がある、と警告する。オバマ元政権時の2011年8月には同様の問題に端を発して、民間格付け会社が米国債の格下げを発表し、金融市場が大きく混乱した。現在の金融市場は、新型コロナウイルスのデルタ株感染拡大や連邦準備制度理事会(FRB)による2021年内の量的緩和の縮小観測など先行き不透明な経済情勢に加えて、中国の不動産大手、中国恒大集団のデフォルト懸念から9月20日のニューヨーク・ダウ工業株30種平均が前週末比で一時900ドル超下げるなど、やや不安定な状況にある。債務問題の対応が市場の新たな火種となれば、協力を拒否している共和党にも批判の矛先が向かう可能性もあり、両党の今後の調整が注目される。
(宮野慶太)
(米国)
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