英政府、個人データの国際的移転にかかる計画発表

(英国、EU)

ロンドン発

2021年09月01日

英国政府は8月26日、個人データの国際的な移転に関する新たな計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。高いデータ保護水準を維持しつつ、データの利活用を促進し、イノベーションや経済成長、雇用創出につなげる。

「英国版一般データ保護規則(UK GDPR)」について、英国は現在、日本やEU加盟国を含む42カ国・地域に対し、個人データの移転を認める「十分性認定」を与えている。政府は今回、十分性認定に向けたパートナーシップ締結の優先的な国・地域として、米国、オーストラリア、韓国、シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ国際金融センター(DIFC)、コロンビアの6カ国・地域を指定。加えて、インド、ブラジル、ケニア、インドネシアの4カ国とも、将来的なパートナーシップ締結を優先的に検討していく考えを示した。世界の重要市場や高成長国との間でデータ移転を容易にし、サービス貿易の拡大などにつなげるのが狙いだ。

併せて政府は、今後のデータ保護規制に関する意見公募を数週間以内に開始する考えを表明。データ保護規制当局の情報コミッショナー事務局(ICO)に対して、監視に加えデータの責任ある利用の促進に関する権限を付与する案のほか、現地メディアによると、ウェブサイトのクッキー使用同意のポップアップを不要にする案などが盛り込まれる見込み(「テレグラフ」8月26日)。「イノベーション・成長・規制改革に関するタスクフォース(TIGRR)」は先に、臨床試験やデジタル医療などの分野でのデータ利活用に向け、UK GDPRに代わる英国独自の仕組み作りを提言していた(2021年6月18日記事参照)。

政府はさらに、ICOのトップである情報コミッショナーの次期候補者に、ジョン・エドワーズ氏を指名したことを公表。同氏は2014年からニュージーランドのデータ保護規制当局のトップを務める専門家で、高度なデータ保護水準を維持しながら、イノベーションの促進や経済成長に親和的な制度構築のかじ取りを託す。

EUは厳しい反応

今回発表した計画について、オリバー・ダウデン・デジタル・文化・メディア・スポーツ相は「英国の国民や企業に対しEU離脱(ブレグジット)の恩恵をもたらす、世界をリードするデータ政策を策定する機会を捉える決意だ」と発言し、計画実行に向け意気込みを見せた。

英国の発表に対し、EU側の見方は厳しい。欧州委員会は6月28日に十分性認定を英国に付与したばかりだが、同国の独自の個人データ保護制度を目指す姿勢を危惧し、4年間の有効期限を設けるなど、警戒していた(2021年6月30日記事参照)。今後、EUのデータ保護水準との乖離により、EU域内の企業や市民に損害が生じることとなれば、十分性認定の取り消しも辞さないと警告している(「フィナンシャル・タイムズ」紙8月26日)。

(尾崎翔太)

(英国、EU)

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