米政権、新型コロナ感染拡大地域限定で家賃滞納者の強制退去猶予を延長
(米国)
ニューヨーク発
2021年08月05日
米国疾病予防管理センター(CDC)は8月3日、新型コロナウイルス対策として導入した家賃滞納者に対する強制退去の猶予措置が7月末で失効したことを受け、感染拡大地域に限定して、この措置を10月3日まで延長することを発表した。
同措置はトランプ政権時の2020年9月に導入され、感染リスクが高まることなどを理由に、家主に対して家賃滞納者の強制退去を猶予・禁止した。バイデン政権でも引き継がれ、期限を迎えるたびにCDCが延長してきた(注)。しかし、最高裁判所が6月に「この措置の延長には議会の承認が必要」との判断を示したことで、ジョー・バイデン大統領は7月29日、措置を延長するよう議会に要請していた。これを受けて下院には翌30日に、措置を10月18日まで延長する法案が提出されたが、可決されず、上院では議題にも上がらずに措置は7月末で失効した。
カリフォルニア州やニューヨーク州など一部の州では独自に、7月末以降の同措置継続を決定するなどの動きが相次いでいだ。また、民主党のナンシー・ペロシ下院議長(カリフォルニア州)ら複数議員はジャネット・イエレン財務長官と電話で協議し、バイデン政権に対して同措置を一方的に延長するよう迫ったとされる(「ワシントン・ポスト」紙電子版8月4日)。こうした動きなどを踏まえて、CDCは感染拡大地域に限定したかたちでの10月3日まで措置延長を発表した。CDCによると、感染拡大地域は「実質的または高いレベルで感染拡大を経験している地域」と定義付けており、8月1日時点で米国の80%超の地域が同措置によりカバーされるとしている。
民間機関のアスペン研究所の分析によると、約650万世帯(1,500万人)が家賃を滞納しているとされ、滞納額は合計で200億ドルに及ぶとしている。また、同措置の失効後、家賃滞納者の約半数が今後2カ月以内の強制立ち退きを余儀なくされると予想していた。
一方で、最高裁からは、措置延長には議会の議決が必要と指摘されているだけに、地域を限定したとはいえ、今回の延長には家主などからの訴訟リスクが残る。バイデン政権では、465億ドルの家主や賃借人向け家賃補助の予算を手当てしているが、6月末までの執行は予算額の6.5%と支給が遅れている。バイデン大統領は今回措置延長を念頭に、「家賃補助が行き渡るまでの時間的猶予ができるだろう」と述べている。
(注)CDCによる命令権限は公衆衛生サービス法に基づくもの。伝染病の拡散防止措置を取る権限を保健福祉長官に付与し、その権限はCDC所長に委譲されている。
(宮野慶太)
(米国)
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