EU、サプライチェーンの強制労働リスクに対処するガイダンスを発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年07月15日

欧州委員会と欧州対外行動庁(EEAS)は7月13日、EU企業が事業活動とサプライチェーンの管理において強制労働に関与するリスクに対処するためのデューデリジェンス・ガイダンス文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ガイダンス文書は、企業がバリューチェーンからの強制労働の根絶に取り組む上での実践的アドバイスをまとめたもの。欧州委は2021年2月に発表した通商戦略(2021年2月19日記事参照)の中で、バリューチェーンの持続可能性を柱の1つに位置付けている。欧州委は、人権デューデリジェンスを含む持続可能な企業統治の法案準備を進めているが(2021年6月10日付地域・分析レポート参照)、法令の実施までには時間を要することが予想される。本ガイダンスはそれまでの間、企業にデューデリジェンス実施の上での非拘束の指針を提供するものだ。

強制労働のリスク要因をリスト化し、リスク評価の手法を示す

ガイダンスではまず、強制労働に対処する上では、一切の妥協を許さない「ゼロ・トレランス」が原則となることを確認。その上で、強制労働のリスク要因(通称「レッド・フラッグ」)を、(1)カントリーリスク要因、(2)移民(出稼ぎ)および非公式な労働に伴うリスク要因、(3)債務に関するリスク要因、の3つの観点に整理してリスト化している(添付資料表参照)。レッド・フラッグに該当する要素が自社のサプライチェーンにおいて特定される場合、企業はより詳細なデューデリジェンスの評価を実施することが推奨される。

詳細なリスク評価手法として、ガイダンスには、現地での独立性を確保した抜き打ち調査や、管理職のいない安全の環境の下で労働者に対するインタビュー実施などが示されている。リスクが高い場合は、サプライヤーが利用しているあっせん業者や、高リスク地域での原材料調達や川上の事業活動を行っている取引業者に対しても、詳細なリスク評価を行う。高リスク地域における評価では、労働組合や市民団体、その他専門家を含む幅広いステークホルダーの関与が望ましいとした。

強制労働の存在が認められる場合、企業はサプライヤーやその他の事業関係者に対して是正のための行動計画を実施するように求め、必要に応じて資金的な支援も行う。こうした措置を通じて是正がみられない場合や、影響が取り返しのつかない深刻なものである場合などでは、当該サプライヤー・関係企業とのビジネス関係を解除することも、適切な最終手段として考慮に入れる必要があるとしている。

(安田啓)

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