米上院民主党、3兆5,000億ドル規模の投資計画を発表、単独採決の構え

(米国)

ニューヨーク発

2021年07月16日

米国民主党の上院院内総務のチャック・シューマー議員(ニューヨーク州)は7月13日、上院予算委員会所属の民主党議員がホワイトハウス当局者と協議を行い、3兆5,000億ドル規模の投資計画に合意したことを明らかにした。協議には共和党メンバーは参加しておらず、同党の支持は見込みにくいことから、民主党単独での採決を目指すものとみられる。

シューマー議員は「超党派のインフラ投資計画(2021年6月25日記事参照)と合わせると、4兆1,000億ドルになり、これはジョー・バイデン大統領がわれわれに求めていた(当初の「米国雇用計画」と「米国家族計画」を合わせた)支出規模に非常に近いものだ」と述べ、今回の投資計画が両計画を踏襲するものであることを示唆した。

本計画の支出の詳細はまだ明らかになっていないが、超党派のインフラ投資計画には含まれていない気候関連投資や米国家族計画に盛り込まれた人的投資関連の支出が柱になるとみられる。民主党の上級幹部が米メディアに語ったところによると、同計画には幼児無償教育拡充や有給休暇、病気休暇手当などが含まれるほか、バイデン政権が3月に制定した1兆9,000億ドルの新型コロナウイルス関連の対策に含まれていた所得税額控除・児童税額控除のさらなる拡充や延長が含まれるだろうという。同幹部はまた、気候関連支出では、クリーンエネルギー投資に対する税制優遇やクリーンエネルギー技術の連邦調達拡充、市民気候部隊への資金供与といった「米国雇用計画」に含まれていた項目を含むと語った(政治専門誌「ザ・ヒル」7月14日)。財源については、富裕層や企業への増税で充てるとみられ、予算委員会のメンバーであるマーク・ワーナー上院議員は、同計画の全費用がこれらにより支払われると述べた(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版7月13日)。一方で、財源の1つとして炭素集約的な輸入品に関税を賦課する案も盛り込まれているとも報じられている(ブルームバーグ7月14日)。

今回の投資計画発表の翌14日には、バイデン大統領が民主党上院議員らと会談し、「われわれはこれを成し遂げなければならない」と語っている。

民主党は8月の議会休会前に今回の計画を反映した予算を通過させたい意向だが、成立に向けての先行きは不透明だ。民主党単独採決の場合、財政調整措置(注)を利用することとなり、上院での可決には民主党上院議員の50人全員の賛成が必要となってくる。しかし、穏健派のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)は、同計画にどのような財源を充てるか精査が必要だとして賛否を明らかにしていないなど、民主党内でも意見集約されていないとみられる。当然、共和党からは激しい抵抗が予想される中、超党派のインフラ投資計画と合わせて、民主党指導部が今後どういった議会運営を行っていくか注目される。

(注)上院では通常、法案可決にはフィリバスター(議事妨害)を抑え込むため、クローチャー(討論終結)決議に必要な60票の賛成が必要となる。ただし、歳出・歳入・財政赤字の変更に関する法案については、財政調整措置(リコンシリエーション)を利用し、過半数での採決が可能。賛否が50票同数の場合、議長を務める副大統領の1票で採決となる。

(宮野慶太)

(米国)

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