EU・米首脳会談開催、民間航空機への対抗措置の5年間停止に合意

(EU、米国)

ブリュッセル発

2021年06月16日

米国のジョー・バイデン大統領の訪欧に伴い6月15日、EU・米国間の首脳会談がブリュッセルで開催された。貿易投資、新型コロナウイルス対応、気候変動、安全保障など多岐にわたる論点について議論が交わされ、「刷新された環大西洋パートナーシップに向けて」と題した首脳声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

WTO史上、最も長い貿易紛争の解決へ

首脳会談の冒頭でEUと米国は、双方の大型民間航空機メーカーへの補助金に関する、貿易紛争の解決に向けた一連の新たな協力枠組みを記した了解(Understanding)を交わしたことを発表した。両者は3月5日に、同紛争に基づき相互に賦課していた追加関税を4カ月の期限付きで停止することに合意していた(2021年3月8日記事参照)。今回EUと米国は、追加関税の停止を5年間継続するほか、双方の貿易担当相をトップとする作業部会の設置、優遇税制などの手段を用いた特定性のある補助金の交付を行わないこと、両者の大型民間航空機産業に悪影響を及ぼす非市場経済国の慣行に共同で対処していくことなど、同紛争の恒久的解決および中国を念頭に第三国の台頭に対処するための協力枠組みの整備に合意した。声明において両首脳は、合意の達成は、刷新されたEU・米国関係を象徴する変化だと強調した。

貿易投資および技術協力に関する他の諸論点では、米国1962年通商拡大法第232条に基づき、米国が鉄鋼・アルミニウム輸入に課している追加関税、およびEUが米国に課している報復措置については、解決に向けて取り組むと述べられるにとどまった。この点、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は会談後の記者会見で、当初EUが6月からの発動に向けて準備していた一部品目の関税引き上げや対象品目の追加について、協議を通じた問題解決(2021年5月20日記事参照)のために6カ月間は発動しないことを明言した。また、両者は、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を含む技術標準形成、サイバーセキュリティーなどの分野における協力を進めるプラットフォームとして、欧州委が2020年12月に発表した米国との新たな関係構築に向けたアジェンダ(2020年12月4日記事参照)で提案していた、ハイレベルの「EU米国貿易・テクノロジー評議会(EU-US Trade and Technology Council)」の設立に合意した。

新型コロナウイルス対応に関しては、「EU米COVID製造およびサプライチェーン共同タスクフォース」を立ち上げ、ワクチンや治療薬の生産能力の拡張、不必要な輸出制限の回避、自発的な技術ライセンス契約の奨励などに取り組むとし、国際的な議論となっている特許権の放棄そのものについて首脳声明では具体的な言及はなかった。

気候変動対策では、グリーン成長を実現するためのイノベーション促進のために「環大西洋グリーン技術アライアンス」の立ち上げに向けて取り組むことや、米国が復帰を果たしたパリ協定の目標実現に向けて協力していくことを再確認した。

その他、安全保障面では、中国新疆ウイグル自治区、香港、台湾、ミャンマー情勢を含む世界各国・地域の諸問題に言及し、共同して取り組んでいくことなどを確認した。

(安田啓)

(EU、米国)

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