米FRB、金融政策の現状維持を決定、2023年以前に利上げ見込む意見が過半

(米国)

ニューヨーク発

2021年06月18日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月15、16日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.00~0.25%とする金融政策の現状維持を決定するとともに(添付資料図参照)、米国債などを月1,200億ドル購入している現状の量的緩和策も現状維持を決定した。今回の決定も前回同様、11人の委員の全会一致だった。

FOMCの声明文では、新型コロナウイルス感染状況と米国経済の先行きについて、「ワクチン接種の普及により新型コロナウイルスの感染拡大は抑えられている」「ワクチン接種の普及は公衆衛生の危機が及ぼす経済への影響を軽減する可能性が高いが、経済の先行きへのリスクは依然残っている」と指摘し、新型コロナウイルス感染拡大が「経済の重荷」となっていると指摘していたこれまでの文言を削除した。

今回の会合では、地区連銀総裁らを含めたFOMC参加者18人による中長期の経済見通しも示されたが、ワクチン普及などによる経済回復を背景に、2021年の実質GDP成長率は7.0%と前回3月の6.5%から大幅に上方修正している。2021年のインフレ率(コアCPE)は3.0%で、こちらも前回3月の2.2%から大幅に上方修正したものの、2022年は前回とほぼ同じ2.1%としており、最近のインフレ傾向は一時的との見方を示した(添付資料表参照)。他方、FF金利の引き上げ時期について、2023年末までに利上げを見込む参加者は13人となり、前回3月の7人から大幅に増えた。また、2022年中の利上げを見込む参加者も7人おり(前回3月は4人)、FOMC内ではこれまで2024年までは金利引き上げを行わないとする意見が大勢だったが、急速な景気回復を背景に2023年以前にゼロ金利政策を解除するという意見に傾いていることが明らかとなった。

ジェローム・パウエルFRB議長は会合後の記者会見で「金融緩和縮小の道筋について議論を始める。本日の会合でもその議論を行った」と述べた。一方で、参加者の過半が2023年以前の利上げを見込むことについて、「委員の予測はFOMCの決定や計画を示すものではなく、今後の経済がどのようになるかは誰も確信を持っていない」とも述べて、2023年以前の利上げが決まっているものではないとした。

また、FRBは16日に、金融機関がFRBに預ける預金に付ける金利(準備預金金利)を0.10%から0.15%に引き上げることを決めている。銀行間で取引されるFF金利も準備預金金利の引き上げの影響を受けて上昇する可能性があり、今回の金利引き上げの議論との関連が指摘されたが、これに対してパウエル議長は「(準備預金金利引き上げは)短期金融市場の機能を円滑にして、FF金利を政策目標内に納めるためだ。FF金利の道筋や金融政策のスタンスと関連したものではない」と述べて、市場の懸念の払拭(ふっしょく)に努めた。

(宮野慶太)

(米国)

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