深セン市、半導体などコア技術の自立自強を目指す

(中国)

広州発

2021年06月22日

中国・深セン市政府は6月8日、深セン市国民経済・社会発展第14次5カ年規画(14・5規画、2021~2025年)と2035年までの長期目標要綱外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、要綱)を発表した。2025年までに域内総生産(GRP)4兆元(約68兆円、1元=約17円)、1人当たり可処分所得9万元をそれぞれ超えるとの目標を示すとともに、2035年までにGRPおよび1人当たりGRPを2020年比で倍増させるとした。なお、2020年のGRPは2兆7,670億元。

深セン市は、2025年までの第14次5カ年規画期間中、年平均で6.0%の経済成長を目指すほか、労働生産性増加率や住民1人当たりの可処分所得増加率も広東省の目標値より高く設定している(添付資料表参照)。デジタル経済におけるコア産業増加値(注1)のGDP比は31%と、中国全体(10%)および広東省(20%)を大きく上回っており、1万人当たりの高価値発明特許保有量も中国全体(12件)に比べ、深セン市(108件)は桁違いに多いのが特徴だ。

要綱では、前述した目標値を達成するために、主に戦略的新興産業(注2)の発展の加速とデジタル経済の新たな優位性を構築することを強調した。戦略的新興産業のトップに挙げられている次世代情報技術では、集積回路(IC)設計能力の強化や中国半導体受託生産最大手である中芯国際集成電路製造(SMIC)の12インチウエハー工場の建設加速、パッケージングや検査、設備、材料の増強など、ICのほぼ全ての製造工程のレベルアップを目指す。

また、化合物半導体産業の積極的発展も記載されるなど、半導体産業の強化を前面に押し出した。デジタル経済の重点発展分野(注3)として最初に挙げられた第5世代移動通信システム(5G)では、インテリジェントコネクテッドカー、AR/VR(拡張現実/仮想現実)、交通物流、遠隔医療、スマート工場など、従来からある典型的なユースケースとの連結性をより深めることのほか、ワイヤレス技術や重要部品、測定器といったコア技術開発の強化を重視した。

強化すべきコア技術の重点8分野を策定

中央政府の14次5カ年規画では、「科学技術の自立自強を国の発展の戦略的支えとする」との目標が示されている。深セン市はカギとなる強化すべきコア技術として、ICや量子情報、脳科学、臨床医療など8つの重点分野を挙げた(注4)。特にICでは、製造工程のレベルアップのほかに、パワー半導体デバイスのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)、SIC(炭化ケイ素)などの化合物半導体の開発を挙げた。技術、産業、人材などを統合した特別基金をつくり、コア技術の自立自強を目指す。

(注1)産業のデジタル化に技術やサービス、ソリューションを提供する産業およびデータやデジタル技術を応用した経済活動。

(注2)戦略的新興産業とは、次世代情報技術、バイオ医薬、デジタル経済、ハイレベル設備製造、新素材、海洋経済、グリーン低炭素を指す。

(注3)重点発展分野とは、5G、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT(モノのインターネット)、ブロックチェーン、人工知能(AI)、AR/VRのこと。

(注4)8つの重点分野とは、IC、量子情報、脳科学、臨床医療、生命健康、生物育種、航空宇宙技術、深海技術を指す。

(清水顕司)

(中国)

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