デジタル課税めぐる米国の対英追加関税案、英国は国際協議継続による解決主張
(英国、米国)
ロンドン発
2021年03月31日
米国通商代表部(USTR)によるデジタルサービス税(DST)導入6カ国に対する対抗措置の意見公募(2021年3月31日記事参照)について、USTRは国別に追加関税対象品目の暫定リストも公表した。英国に対しては、化粧品や衣類、セラミック製品、冷蔵庫、産業用ロボット、家具、家庭用ゲーム機など米国実行関税分類(HTS)8桁ベースで69品目を挙げた(対英暫定リスト参照)。これら物品に最大25%の追加関税を課し、対英輸入合計で、米国企業に対する英国のDST税収の推計額と同規模の約3億2,500万ドルの対抗措置を導入する考え。
英国は2020年4月からDSTを導入(2020年3月23日記事参照)。検索エンジンやSNS、オンラインマーケットプレースの世界売り上げが5億ポンド(約760億円、1ポンド=約152円)超、うち英国ユーザーからの売り上げが2,500万ポンド超の企業に対し、英国での売り上げの2,500万ポンド超の部分に2%を課税する。財務省が見込む2020~2021年度の同税収は3億ポンド程度で、今回の対抗措置の算出はこのうち米国企業が支払うDSTの金額を基にしている。
USTRは英国を含む6カ国のDSTを「不当かつ差別的」と指摘。これに対し、英国政府報道官は3月29日、メディア各社への声明で「多くの国と同じように、英国はテック企業に公正な税負担を求めている」にすぎず、DSTは「正当、相応かつ非差別的」と反論。エリザベス・トラス国際通商相も「フィナンシャル・タイムズ」紙(3月30日付)の取材に対し、「(報復)関税が解決策になるとは思わない」とコメントしている。
英国政府はDST導入当初から、多国籍テック企業への課税は国際的な法人税改革によって解決すべきと主張。G7やG20、OECDなどでの協議を通じて対策が実現すれば、DSTは廃止する考えを示していた。政府報道官も今回、DSTは「一時的なもの」とあらためて言及し、米国や他の国々と協働していることを強調。政府は2021年に英国が議長国を務めるG7でも、財務相・中央銀行総裁会議を軸にこの問題を優先的に取り上げる意向を示している。
業界団体からは失望の声も
英国セラミック連盟はBBCの取材に対し、「英国政府関係者とともに、展開を注視している」とコメント。他方、英国ファッション・テキスタイル協会のアダム・マンセルCEO(最高経営責任者)は「3月初旬に、米国が英国産ファッション製品への追加関税を撤廃したばかり。再び生産者が追加関税に脅かされることは極めて遺憾で、特に、背景の通商摩擦がわれわれの産業に関係ない中ではなおさらだ」と強い失望を表明した。
アパレル業界の対米輸出をめぐっては、USTRが3月4日から航空機補助金に関する対英追加関税を4カ月間停止したことで、25%の追加関税負担から解放されたばかりだった(2021年3月5日記事参照)。
(宮崎拓)
(英国、米国)
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