英政府がフィンテック・レポートを公開、高スキル人材確保へ優先ビザ制度の創設も
(英国)
ロンドン発
2021年03月12日
英国政府は2月26日、英国におけるフィンテックの現状などをまとめた第三者評価レポートを公表した。同レポートでは、現在の同国を取り巻く環境を踏まえて、世界有数のフィンテック市場を有する英国の取り組みや課題について、言及している。
同レポートによると、英国のフィンテック市場は2019年の世界市場シェアの約10%を占め、年間の収益は約110億ポンド(約1兆6,500億円、1ポンド=約150円)に上るとしており、国民の約71%が少なくとも1つ以上のフィンテック企業のサービスを利用していることを示した。また、投資環境では、2020年の英国フィンテック企業への投資額は約41億ドルと、米国に次ぐ世界2位となった。これは、欧州全体の投資額93億ドルの半数近くを占める。
しかし一方で、同レポートの著者であるロン・カリファ氏は英国について、フィンテックを世界的に先導するポジションにいるとしながらも、「将来は確実ではない」との見方を示し、世界の他の金融センターとの競争の激化、英国のEU離脱(ブレグジット)に起因する規制の不確実性、「新型コロナウイルス危機」に起因する世界的な「デジタル導入の加速」を、英国の地位を脅かす「3つの大きな脅威」として強調している。また、デジタルファイナンス・パッケージの提供や新たな規制の枠組みなどの「規制・政策」や、人材の育成方針、確保するための新たな就労ビザなどの「スキル」、ファンドの創設や研究開発(R&D)に対する税額控除などの「投資」、など5つの分野で提案を提示している。
高スキル人材確保のために、優先ビザ制度の創設を計画
英国政府は、フィンテックなどの高成長企業での人材を確保すべく、2022年3月までに同人材のファストトラック(優先審査)ビザ制度を導入するとし、先日発表した2021年度予算案(2021年3月9日記事参照)の中でも、高スキル人材を世界中から呼び込むことでイノベーションの促進につなげる施策として、同制度について言及している。これは、ブレグジットに伴い、EU単一市場から離れたことで、EU圏からの人材の確保が困難になったことが背景にある。同施策には、業界団体のTeck UKや企業からも歓迎の声が聞こえている。
(尾崎翔太)
(英国)
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