米石油協会、カーボン・プライシングへの支持を表明
(米国、EU、中国)
ニューヨーク発
2021年03月31日
米国のエネルギー業界団体である米国石油協会(American Petroleum Institute:API)は3月25日、気候変動に対応するための行動計画を発表し、その中で、温室効果ガス(GHG)の排出に価格付けを行う「カーボン・プライシング」(注)への支持を表明した。カーボン・プライシングは欧州や中国などで導入されているが、有力業界団体による支持をきっかけに、今後、米国でも具体的な制度導入の議論が進んでいく可能性がある。
行動計画は「気候フレームワーク」と呼ばれ、5つの柱から成る。カーボン・プライシングについては、その手法が排出量取引制度か炭素税かにかかわらず、連邦政府による経済全体を対象とした、透明性があり規制の重複がない政策を支持するとしている。そのほか、水素技術や炭素回収・利用・貯留(CCUS)などの技術革新の推進、メタン検出技術開発などによる事業活動での排出量のさらなる削減、天然ガスの利用拡大によるクリーン燃料の推進などを掲げる。
APIのマイク・ソマーズ会長兼最高経営責任者(CEO)はプレスリリースの中で、「気候変動の課題に立ち向かい、低炭素の未来を築くには、政府の政策、産業界の取り組み、継続的なイノベーションの組み合わせが必要」と指摘した上で、「カーボン・プライシングを含むイノベーションを促進する、市場に基づいた政策を支持するよう議員に要請する」と述べた。
ケリー米大統領特使、国際会議で排出量ネットゼロに向けた具体的取り組みを訴え
各国のGHG排出量削減目標の引き上げを受けて、欧州では炭素の取引価格が2020年末より3割程度高い水準で推移している。また、中国でも2021年6月に、二酸化炭素(CO2)の排出量取引所が上海に新設される予定など、世界でカーボン・プライシングをめぐる動きが加速している。そうした中、ジョン・ケリー米国気候変動担当大統領特使は3月23日、中国とEU、カナダがオンラインで共催した「第5回気候行動に関する閣僚会合」に出席し、主要国を含めできる限り多くの国が2050年までにGHG排出量ネットゼロを実現するための具体的な戦略を策定すべきだと訴えた。同会議には、中国で気候変動問題を担当する解振華・気候変動事務特使も参加したが、会議前に予想されていたケリー氏とのオンライン会談は行われなかったもようだ(「サウスチャイナ・モーニングポスト」紙3月24日)。
(注)国が定めた排出量の削減目標に基づき、政府が企業など排出主体に対して排出量の上限を設定し、企業などに市場で排出枠を売買することを可能にする制度(添付資料図参照)。
(宮野慶太)
(米国、EU、中国)
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