バイデン米大統領、バイ・アメリカン政策を強化する大統領令に署名
(米国)
ニューヨーク発
2021年01月27日
ジョー・バイデン米国大統領は1月25日、公約の1つであるバイ・アメリカン政策の強化について、記者会見でその具体策を説明するともとに、大統領令に署名した。政府調達規則の厳格化を行うとともに、ホワイトハウスに高官ポストを新設し、規則順守に関する監視を強めるとしている。労働組合は歓迎する一方、米業界団体は政府調達案件のコスト増や外国の投資家からの反発を招くと懸念を表明している。
バイデン氏は記者会見で、バイ・アメリカン政策の強化について「中核的なこの課題に対し、集権的かつ調整された取り組みを行っていく」ことを強調した。そのために、ホワイトハウス内の行政管理予算局(OMB)に、政府横断でバイ・アメリカン政策の実施を監督する部署と高官ポストを新設するとした。政府調達規則については、(1)例外適用の厳格化と、(2)政府機関が調達する製品における国内調達比率の引き上げが焦点となる。
(1)では、各政府機関の判断に委ねていたのを、OMBの新設ポストに一元化する。例外適用を求める政府機関は事前に、OMBへ申請し承認を得なければならない。申請内容も公開される。(2)では、1933年バイ・アメリカン法を根拠とする連邦調達規則(FAR)25条で、「製品価格のうち50%を超える部分が米国で製造されている」ことが要求されていたが、その比率を引き上げる。FAR協議会が180日以内に、改正規則案とパブリックコメントの募集発表を検討する。また、バイデン氏は「各国がそれぞれの納税者の税金を用いて投資を刺激し、経済成長と強靭(きょうじん)なサプライチェーンを促進できるよう、政府調達を含む国際貿易ルールの現代化に向けて、貿易相手国と協働していく」との考えを示した(注)。
民主党の主要な支持母体の労働組合を代表する、米労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)は「トランプ前政権の政策が過去4年間で実現できなかった製造業の再活性化に向けた良い第一歩だ」との声明を出している。一方、米国商工会議所は、政府調達関連支出の97%が米国企業に流れている中で規則を厳格化することは、「政府調達案件のコスト増を招き、雇用創出や経済成長の潜在性を損なう」と懸念を表している。さらに、「米国への投資を検討する外国の投資家にも、マイナスのサインを送る」と指摘している。
大統領令の効果について、中道右派の米シンクタンク、アメリカン・アクション・フォーラムは米政府公開データに基づく分析で、2019会計年度に政府調達で購入した製品の合計額約2,217億ドルのうち、外国製品が占めた割合は国内調達要求の例外適用があった分も含めて3.5%のみだったとして、規則改正がもたらす効果は潜在的に小さいと指摘している。他方、中道シンクタンクの米戦略国際問題研究所(CSIS)のウィリアム・レインシュ上級顧問は、すぐに効果は生まないが、国内調達比率の引き上げによって長期的には企業のサプライチェーン戦略に影響を与え得る、としている(「ワシントンポスト」紙電子版1月25日)。
(注)大統領令では具体的な指示は記載されていないが、同令Sec.12(c)で、各政府機関は2年に1度、OMBに対して1979年貿易協定法に基づく例外適用による支出内容を分析し、報告することになっている。同法に基づくFARでは、米国が締結しているWTO政府調達協定や自由貿易協定(FTA)への参加国・地域などを、政府調達における国内調達要求の適用除外対象と認めている。対象国・地域は、米政府一般調達局(GSA)が公開している。
(磯部真一)
(米国)
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