米USTR、欧州3カ国のデジタル課税を不当と報告、イエレン次期財務長官は交渉に前向き
(米国、英国、スペイン、オーストリア、EU、ブラジル、チェコ、インドネシア)
ニューヨーク発
2021年01月21日
米国通商代表部(USTR)は1月14日、デジタル課税を導入する英国とスペイン、オーストリアに対する調査結果を公表した。いずれも米国企業を差別しているとの結論だが、現時点で対抗措置は講じない。
USTRは、各国が導入・検討するデジタル課税に対する調査を行っており、今回の発表は2020年のフランスや、2021年1月6日のインド、イタリア、トルコに続く報告となった(2021年1月12日記事参照)。USTRによると、今回報告した各国のデジタル課税の概要は以下のとおり(注)。
- 英国:税率2%、全世界におけるデジタル事業の年間売上高が5億ポンド(約710億円、1ポンド=約142円)超(そのうち、英国でのデジタル事業売上高が2,500万ポンド超を占める)の企業が対象
- スペイン:税率3%、全世界における年間売上高が7億5,000万ユーロ超(そのうち、デジタル事業売上高が3億ユーロ超を占める)の企業が対象
- オーストリア:税率5%、全世界における年間売上高が7億5,000万ユーロ超(そのうち、オーストリアでのデジタル広告事業売上高が2,500万ユーロ超を占める)の企業が対象
USTRは、全世界で相当の売り上げを有する企業が課税対象であることから、米IT大手が標的になっていると主張している。USTRはその根拠として、英国やオーストリアの閣僚・議会議員がグーグルやアップル、フェイスブック、アマゾンへの課税を求める証言をしているほか、スペインでは課税対象の64%を米国企業が占めることなどを挙げた。
USTRは各国のデジタル課税が1974年通商法301条に基づく対抗措置の発動要件を満たすと結論付けたが、現時点で具体的な措置は取らないとしている。ロバート・ライトハイザーUSTR代表は「最善なのは、国々が共同で解決策を見出すこと」と述べた。また、USTRは、デジタル課税の導入を進めるEUやインドネシア、チェコ、ブラジルに関する中間報告を公表し、懸念を表明するとともに、調査を継続する意向を示している。
デジタル課税をめぐっては、OECDでの合意が遅れた結果、複数の国が独自のデジタル課税導入を進め、ベルギーやノルウェー、ラトビアなども2021年内の導入を検討している(「ブルームバーグ」電子版1月14日)。ジャネット・イエレン次期財務長官は1月19日の上院の指名公聴会で、多国籍企業への課税に関して、OECD交渉での他国との連携に意欲を示す発言を行っている。
(注)各国のデジタル課税について、その課税範囲や算出方法などの詳細は異なる。
(藪恭兵)
(米国、英国、スペイン、オーストリア、EU、ブラジル、チェコ、インドネシア)
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