英EU交渉が大詰め、集中協議で合意を模索
(英国、EU)
ロンドン発
2020年12月07日
英国のEU離脱(ブレグジット)に伴う移行期間終了まで残り1カ月を切り、英国とEUの将来関係交渉が大詰めを迎える。両交渉団は10月22日の交渉再開(2020年10月22日記事参照)以降、ロンドンとブリュッセルを往復して集中協議、11月中に合意は実現しなかったものの、12月初めには双方の関係筋から楽観論も聞かれ、合意は目前との見方も広がっていた。
しかし12月4日夜、英国のデービッド・フロスト首席交渉官と欧州委員会のEU英国将来関係タスクフォースのミシェル・バルニエ代表が、「公正な競争条件(レベルプレイングフィールド:LPF)」、「漁業」、紛争解決などの「ガバナンス」の3分野で乖離が大きいことを確認、EU・英国両首脳への現状報告のため交渉を一時休止したとツイート。翌5日夕刻には、ボリス・ジョンソン首相とウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長が電話協議し、3分野の相違が解決していないことを再確認する一方、妥結に向けた努力継続のため翌6日からブリュッセルで交渉を再開するよう指示した。フロスト氏は6日午後、ブリュッセルに到着し、双方の交渉が再開された。
漁業は妥協に向け進展か
山場を迎える中、妥協に向け新たな動きもみえる。12月6日夜には、英国の複数メディアが、漁業について双方が折り合いつつあると報道した。EU漁船の英国水域への自由アクセスを5~7年かけて段階的に停止する移行期間を設け、同水域でのEU漁獲割当の50%を返還という案が浮上しているもよう。英国は先に、3年の猶予期間と80%の割当返還を提示、対するEUは10年間、15~18%の返還を主張、と報じられていた。
他方で、LPFはなお乖離が大きく、それと関連が深いガバナンスと併せ、最大の難問に。EUは、当初主張していた英国規制のEU規制への連動やEU司法裁判所の管轄権の要求を取り下げる一方、英国側は、政府補助金で通常の自由貿易協定(FTA)以上の規定の受け入れ用意があるとする(2020年10月22日記事参照)など、歩み寄りはみられていた。しかし、LPFが確保されなくなった場合の一方的な報復関税の直ちの発動や通商・漁業・その他の分野横断的な制裁措置を可能にしたいEUに対し、それらを回避したい英国の主張がなお平行線をたどっているようだ。
12月7日までの交渉を踏まえ、ジョンソン首相とフォン・デア・ライエン委員長は、同日夜に再び電話協議を行う予定。10、11日には欧州理事会が控えており、協議は理事会当日まで続く可能性がある。安易な妥協を警戒するEU加盟国の一部からは、詰めの協議を2021年に持ち越すよう求める声も上がる。
アイルランドのサイモン・コーブニー外相兼国防相は12月5日夜、英EU通商協定の97~98%は既に合意と発言(「インディペンデント」紙12月6日)しており、集中協議の結末に注目が集まる。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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