欧州委、EVの促進などスマートモビリティー戦略発表

(EU)

ブリュッセル発

2020年12月11日

欧州委員会は12月9日、2050年までの気候中立(温室効果ガス排出実質ゼロ)を目指す「欧州グリーン・ディール」の一環として、持続可能なスマートモビリティー戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。現在、温室効果ガス排出に占める交通輸送業界の割合はEU全体の約4分の1となっていることから、2050年までの目標達成には同業界における排出量削減が欠かせない。欧州委は同業界の各分野での目標や行動計画を示すことで、2050年までに排出量の90%削減を達成したい考えだ。

2030年までにEVを3,000万台に

欧州委は、こうした野心的な削減目標の達成のためには、現在の化石燃料への依存をあらゆる輸送手段において大幅に軽減する必要があるとする。そこで、2030年までに電気自動車(EV)などの温室効果ガス排出ゼロの乗用車やトラック(ローリー)を最低でもそれぞれ3,000万台と8万台に増やすとし、さらに、2050年までには大型車両を含むほぼ全ての自動車の排出ゼロ化を目指す。それに合わせ、2030年までに1,000カ所の水素ステーションと、300万カ所の充電スタンドの設置を目標とし、2021年6月までに乗用車などの二酸化炭素や大気汚染物質などの規制強化法案を提案するとしている。また、脱炭素化が難しいとされる航空と海運分野の研究開発を加速させ、それぞれ2030年と2035年までに排出ゼロの外航船と大型航空機を市場に投入することを狙う。

また、鉄道輸送や公共交通機関の利用拡大などにより持続可能な代替輸送手段を幅広く確保する必要があると指摘。2030年までに500キロ以内の定期運行の旅客輸送の脱炭素化を達成し、高速鉄道の旅客量や鉄道輸送量を2030年までに現在の2倍と1.5倍にし、2050年までに3倍と2倍にそれぞれ増やすとした。

さらに、化石燃料への税控除などの補助金の廃止などに加えて、排出量取引制度(ETS)の対象拡大を含む、温室効果ガスの排出に関わる社会的費用の汚染者負担・利用者負担の原則の2050年までの完全実施など、脱炭素化に向けたインセンティブを提供する予定だ。

そのほかにも、デジタル技術を活用し、2030年までに電子チケットによる複数の交通手段の一体的な利用の促進や貨物輸送のペーパーレス化、自動運転技術の大規模な実用化なども目指すとしている。

(吉沼啓介)

(EU)

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