米商務省、中国半導体最大手SMICなど77の外国事業体を輸出管理対象に追加
(米国、中国)
ニューヨーク発
2020年12月23日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は12月18日、中国の半導体最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)を含む77の外国事業体を輸出管理規則(EAR)に基づくエンティティー・リスト(EL)に追加したと発表した。正式には12月22日の官報で公示したが、EL追加は18日から有効となっている。
ELに記載された事業体へ米国製品(物品・ソフトウエア・技術)を輸出・再輸出する際は、通常は輸出許可が必要ない品目でも、事前の許可が必要となる。また、BISの指定によっては「原則不許可(presumption of denial)」などのより厳しい制限が課される。今回追加された77の事業体のうち60が中国籍(香港を含む)の事業体で、残りの17はブルガリア、フランス、ドイツ、イタリア、マルタ、パキスタン、ロシア、アラブ首長国連邦(UAE)籍だ。
BISが今回最も強調したのがSMICと関連企業10社に対する管理強化で、同社を名指ししたプレスリリースを別途発表している。ウィルバー・ロス商務長官はその中で「EL規制は、中国が世界の不安定化をもたらす軍事活動を支えるために、国内最大手のSMICを通じて米国製技術を活用した中国内の先端技術レベルの引き上げをできないようにするための当然の措置だ」としている。BISはSMICのEL追加理由について、中国政府の軍民融合戦略(注)への加担としており、回路線幅が10ナノ(10億分の1)メートル以下の半導体を製造するのに必要な米国製品の同社への輸出・再輸出・国内移送(以下、輸出など)は原則不許可となる。それ以外の製品の輸出などは、事案ごとにBISが判断する。今回のBISの措置に対し、中国の王毅・国務委員兼外交部長は18日、「安全保障上の懸念を拡大解釈して、恣意(しい)的に中国企業を抑圧すべきでない」と批判している(2020年12月22日記事参照)。
BISは、その他の中国籍の事業体については、SMIC同様の軍民融合戦略への加担に加えて、人権侵害への加担、南シナ海の軍事拠点化・違法な領有権主張への加担、米企業秘密の盗取を理由に、ELへ追加している。中国籍以外の事業体については、いずれも米国の輸出管理法令への違反が理由となっている。各事業体に対する規制内容は、官報末尾に付帯したELの表で確認が可能となっている。「許可必要品目(License requirement)」の列で、BISに対して許可申請が必要な品目の範囲を定めており、許可審査方針(License review policy)」の列で、BISが許可を出すに当たっての方針を定めている。また、今回の更新内容を踏まえた全体のELはBISのウェブページで確認できる。
(注)米国務省によると、中国共産党が人民解放軍を世界クラスの軍に発展させるため、民間企業を通じて外国の技術を含む重要・新興技術を取得・転用する戦略。同省によるファクトシートも参照。
(磯部真一)
(米国、中国)
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