欧州委、EUの2020年のGDP成長率予測をマイナス7.4%に据え置き
(EU、ユーロ圏)
ブリュッセル発
2020年11月10日
欧州委員会は11月5日、秋季経済予測を発表した。2020年のEU27カ国の実質GDP成長率をマイナス7.4%と予測し、5月の春季経済予測(2020年5月8日記事参照)から据え置いた(添付資料表1参照)。一方、ユーロ圏についてはマイナス7.8%とし、0.1ポイント下方修正した(添付資料表2参照)。
EUの経済活動は、上半期に新型コロナウイルス感染拡大の深刻な影響を受けた後、各国の制限措置の段階的な緩和を受けて第3四半期に力強く回復したものの、直近の数週間での感染再拡大に伴い、各国で制限措置などが再び導入されており、今後の成長予測は高い水準で不透明性とリスクを含むとした。
2020年は全EU加盟国でマイナス成長となるが、感染拡大が各国の経済に与えた影響と今後の回復の見通しは、国により大きく異なるとした。スペイン(3.0ポイント下方修正)、ポルトガル(2.5ポイント下方修正)などの6カ国で前回予測から1ポイント以上の下方修正となった。一方、リトアニア(5.7ポイント上方修正)アイルランド(5.6ポイント上方修正)などの10カ国で1ポイント以上の上方修正となった。
感染拡大の長期化による下振れリスクを指摘
今回の予測は、感染拡大と各国の制限措置がある程度継続し、EUと英国の貿易関係が2021年1月からWTOの最恵国待遇で行われるとの仮定に基づいている。この仮定の下で欧州委は、EU経済は2022年までに「新型コロナ危機」前の水準に回復する見込みはない、と分析する。感染拡大の第2波は第1波ほど消費と投資に影響を与えないとしつつも、感染状況の進展や各国の経済対策、家計や企業の行動の変化については見通しが困難で、下振れリスクは主にこうした不透明性に関連しているとした。また、仮定よりも感染拡大が長期化し、グローバルバリューチェーンにより深刻で長期的な打撃を与えた場合、国際貿易をめぐる緊張も高まり、EU経済は今回の予測以上に大きな影響を受ける可能性があるとした。
一方で、今後の成長予測が上振れしうる要因として、復興基金「次世代のEU」(2020年9月24日付地域・分析レポート参照)の実施、新型コロナウイルスのワクチンの早期普及、EUと英国の通商交渉の合意などを挙げた。
欧州委は今回、EUとユーロ圏の2020年の失業率を前回予測からそれぞれ1.3ポイント下方修正し、7.7%、8.3%とした(添付資料表3参照)。大規模な解雇を回避するために各加盟国で実施された雇用維持政策の効果により、労働市場への影響は比較的緩和されているものの、失業率は2021年にかけてEUで8.6%、ユーロ圏で9.4%まで悪化する、と予測した。
欧州委のバルディス・ドムブロフスキス上級副委員長(経済政策総括、通商担当)は、深刻な影響を受けている地域と産業を支援するために合意された復興基金の2021年からの実施に向けて、欧州議会による承認と加盟国の手続きの早期完了を呼び掛けた。
(大中登紀子)
(EU、ユーロ圏)
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