欧州委、貿易協定の年次報告書で日EU・EPAを評価

(EU)

ブリュッセル発

2020年11月13日

欧州委員会は11月12日、2020年版「EU貿易協定の実施状況に関する年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公表した。EUが自由貿易協定(FTA)を締結する65カ国・地域との2019年中の貿易状況や各FTAの運用に関する動向についてまとめたもの。通算で4回目となる今回の報告書は、2019年2月に発効した日EU経済連携協定(EPA)の効果を特集(注1)している点が特徴となっている。さらに今回、欧州委は報告書に加え、FTA締結相手ごとの主要品目別の「特恵利用率(注2)」をまとめたデータベースを公表した。

日EU・EPAのさらなる活用拡大の余地を指摘

報告書によれば、2019年のEUの貿易総額は前年比で2.5%の増加(輸出3.5%増、輸入1.4%増)だったのに対し、FTA締結相手国・地域との貿易は3.4%増加した(輸出4.1%増、輸入2.6%増)。また報告書では、近年のFTA締結相手国であるカナダとの貿易総額が24.5%増、日本は5.8%増と目立って増加したと指摘し、欧州委のバルディス・ドムブロフスキス委員(通商担当)は、「カナダや日本との貿易の拡大をみても、関税の削減が貿易に弾みをつけることが確認できる」と、FTAの成果を強調した。

日本については、EUからの農産物・食品輸出が16%増加し、中でも顕著な増加がみられた代表例としてワイン(13.5%増)、豚肉(11.3%増)、チーズ(9.6%増)などを挙げた。工業製品の輸出でも、関税削減の対象である織物、衣類、履物類などの輸出が平均で約1割拡大した、と指摘した。報告書によれば、EUから日本への輸出における特恵利用率は全品目では53%で、農産物輸出での利用率86%に対して、工業製品輸出は35%で、欧州委はさらなる活用の余地がある、と述べている。なお、公表されたデータベースによれば、EUの輸入における日本産品の特恵利用率は全品目で37%となり、今後、段階的な関税撤廃が進むにつれ、日本からの輸出でも日EU・EPAの利用拡大が期待される。

(注1)日EU・EPA発効1周年に際しての欧州委プレスリリース(2020年2月3日記事参照)は、統計のタイミング上、2019年11月までの貿易統計に基づいている。年次報告書は、EPAが発効した2019年2月1日から同年末までをカバーしている。

(注2)主要品目を21カテゴリーに分類し、有税品目の輸入額に占めるFTA特恵税率を利用した輸入額を「特恵利用率(PUR: Preference Utilisation Ratio)」として算出している。EU統計局データに基づく「EUへの輸入外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」データと、各国統計に基づき欧州委貿易総局が推計した「EUからの輸出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」データを公表。

(安田啓)

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