電力庁の既存顧客の自家発電事業への新たな参画禁止、連邦機関内に反対意見も
(メキシコ)
メキシコ発
2020年10月09日
メキシコの国家エネルギー規制委員会(CRE)は10月7日、前日の臨時運営審議会で採択した決議を官報公示した。2014年8月に公布された電力事業法の発効前に許認可を得ていた民間自家発電事業、あるいはコジェネレーション事業に対し、電力庁(CFE)基礎供給部門の電力利用者が新たに出資者として参加し、当該民間事業者から電力を調達することを禁止するもので、これにより、再生可能エネルギーや高効率コジェネレーションなどを活用して以前から自家発電を行っていた事業者は、事業拡大のための新たな出資者を募ることができなくなる。
決議の草案は10月5日に国家規制改善委員会(CONAMER)のウェブサイト上で公開されたが、連邦経済競争委員会(COFECE)は以下の理由から反対し、再考すべきという意見を10月6日付で出していた。
- 発電事業の既存ルールを変更することで事業者の投資収益見通しに悪影響を与え、投資家の不安感を増し、発電事業に対する投資意欲を減退させ、市場で(CFEと)競争できる可能性を限定的なものとする。
- 電力需要が1メガワット(MW)に満たない基礎供給部門の需要者に対し、CFE以外の電力調達の選択肢を奪う。
- CFEにのみ特別な優位性を付与することで、CFEのサービスの質改善を通じた市場シェア獲得への意欲をそぐ
COFECEはまた、今回の規則変更が規制影響分析(AIR)のプロセスを経ずに官報公示されたことにも遺憾の意を表している(10月7日付プレスリリース)。連邦政府の規則改定は、CONAMERのウェブサイト上で1カ月ほど草案が公開され、パブリックコメントの公募を受けた上で草案を改善するのが通常のプロセスだ。しかし、今回はCREが規則改定は既存の事業者に対して規制コストを増加させないと主張してAIRプロセス免除をCONAMERに申請し、CONAMERがそれを認めたため、草案公開から2日を待たずに官報公示された。
大統領の国営企業重視の方針に沿った措置
今回のCRE決議は、9月22日にエネルギー関係の連邦規制機関にアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領が徹底することを要請した大統領のエネルギー分野優先事項(2020年9月29日記事参照)に沿ったものだ。ここ数年は民間発電事業者がCREに申請する新規発電事業許可の取得に大幅な遅れが出ており、前政権下で進められてきた長期電力競売(2017年12月25日付地域・分析レポート参照)も凍結されているため、市場競争を排除し、CFEが独占的地位を保つ方向に進んでいる。このような規則変更は現行法体系上の無理があるため、多くの訴訟を招いている。2020年4月末以降に相次いで発表された一連のCFE優遇策(2020年5月7日記事、5月18日記事参照)に対しても、多くの事業者が裁判所に提訴して勝訴しており、現政権のエネルギー政策についての法的信頼感は著しく低下している。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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