「次世代のEU」に基づく720億ユーロの復興計画骨子を発表
(スペイン)
マドリード発
2020年10月14日
スペイン政府は10月7日、EU復興基金に基づく経済復興計画の概要を発表した(添付資料参照)。2021~2023年の3年間に720億ユーロを投じ、「グリーン化」「デジタル化」「男女平等」「社会的・地域的結束」の4本柱の変革を、「産業支援」や「エネルギー移行」「介護・雇用」など10の政策分野で展開する。経済的・社会的基盤の変革を通じて、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済の回復、発展のための地固めを図る。
EUの総額7,500億ユーロの復興基金「次世代のEU」(2020年7月21日記事、2020年9月18日記事参照)のうち、スペインへの割当額は1,400億ユーロと、イタリアに次ぐ規模。今回の計画では、この約半分に当たる720億ユーロの補助金部分の実質全額が原資となる(残りは融資枠)。実際のEUからの資金供与は2021年以降となるが、予定よりも前倒しで計画を実施すべく、その一部を現在策定中の2021年予算に組み込む予定。
2,500億ユーロ超の民間資金動員を見込む
予算配分はEUの復興基金の趣旨に沿って、7割をグリーン化(37%)とデジタル化(33%)の施策に充てるとしている。
グリーン化施策では、再生可能エネルギー発電所の大規模展開のほか、2023年までに電気自動車(EV)の新車販売台数を25万台に増やし、充電インフラを10万カ所に拡大する目標を発表。さらに、住宅50万件のエネルギー効率化や、洋上風力発電をはじめとする沿岸・海洋資源の活用、グリーン水素(注)の導入が目玉になっている。
デジタル化施策は、コネクティビティやサイバーセキュリティ、第5世代移動通信システム(5G)通信インフラ普及、公的機関や中小企業のデジタル化、スタートアップ支援、データ・人工知能(AI)活用推進などが優先政策課題となる。
同計画では、上記の基盤施策を通じて、過疎化や男女平等、介護、雇用促進など、スペインが抱える社会問題の解決を目指すほか、計画の円滑な執行のための財政・税制や行政面の構造改革も示されている。
政府は、同計画による官民連携を通じて公的資金(720億ユーロ)の約3.5倍に相当する2,500億ユーロの民間資金動員を見込んでおり、これにより、2021~2023年の3年間で2.5ポイントのGDP成長率の押し上げと、80万人の雇用創出を目標としている。
同計画は今後、草案として欧州委員会に送付され、年明け以降、欧州委員会の評価作業(2カ月)、EU理事会(閣僚会議)の経済財政理事会による審査(4週間)を経て承認を受け、資金が供与される予定。
(注)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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