中国で輸出管理法が成立、貨物、技術、サービスなどの輸出管理を強化
(中国、米国)
北京発
2020年10月21日
中国の輸出管理法が10月17日、全国人民代表大会常務委員会において成立した。12月1日から施行される。同法では、管理品目と輸入業者・エンドユーザーについての規制リストを作成し、管理品目やリストに掲載された輸入業者・エンドユーザーに対して輸出を禁止・制限するというかたちで、管理を強化する。
管理品目の具体的なリストは同法成立時点では公表されていないが、同法の総則において輸出管理を適用するものとして「デュアルユース品目、軍用品、核に加え、国家安全と利益の擁護、拡散防止など国際義務の履行にかかわる、貨物、技術、サービスなどの品目」と規定された(注1)。
輸入業者・エンドユーザーの規制リストについても、同法成立時点では公表されていないが、以下の状況が1つでもある輸入業者・エンドユーザーが該当するとされた。
- エンドユーザーあるいは最終用途の管理要求事項に違反したもの
- 国家安全と利益に危害を及ぼす可能性のあるもの
- 管理品目をテロリズムの目的で用いるもの
規制リストに加えられた輸入業者・エンドユーザーに対し、国家輸出管制管理部門は関連する管理品目の取引を禁止・制限するなどの措置をとることができるほか、輸出者は規定に違反して規制リストに加えられた輸入業者・エンドユーザーと取引を行ってはならないとされた(注2)。
同法の企業への影響について、DaWo法律事務所のラッシュフォース弁護士は「米中両国の企業は特に戦略的に敏感な産業分野において、より多くの審査を受けることを想定し、準備をしていく必要がある」と指摘する(「南華早報」10月17日)。
輸出管理法は、商務部が2017年6月に草案を公表して以降、3回にわたりパブリックコメントが実施されてきた。日米欧の主要産業団体は各草案に対して、「再輸出」「みなし輸出」「法の域外適用による責任追及」などの規定があいまいな点などを指摘し、改善要望を行ってきた。
一般財団法人安全保障貿易センターによる同法の解説資料では、「再輸出」規制について「米国式の再輸出規制が下位規則において導入される可能性が高い」と指摘している(注3)。
なお、今回成立した輸出管理法の条文は、49条で構成された原則的な内容にとどまっていることから、環球法律事務所の任清パートナー弁護士は「同法は、関連の法律法規が制定されてから有効に機能する」と指摘する(「環球時報」10月18日)。「再輸出」などが関連法規により、どのように規定されるのか、注視する必要がある。
(注1)管理品目について、草案段階ではデータに関する記述はなかったが、成立した条文においては、「管理品目には、品目に関連する資料などのデータを含む」と規定された(同法2条)。
(注2)「輸出者が特殊な状況下において、規制リストに加えられた輸入業者、エンドユーザーと取引を行う必要がある場合、国家輸出管制管理部門に申請をすることができる」「国家輸出管制管理部門は、実際の状況に基づいて、規制リストに加えられた輸入業者、エンドユーザーを規制リストから削除することができる」などの措置も設けられている(同法18条)。
(注3)同センターのウェブサイトに、輸出管理法に関する解説資料などが掲載されている。
(北京事務所)
(中国、米国)
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