欧州委、重要な原材料に関する行動計画を発表
(EU)
ブリュッセル発
2020年09月04日
欧州委員会は9月3日、「重要な原材料」(Critical Raw Materials)の供給に関するコミュニケーション(政策文書)を発表した。重要な原材料は、発光ダイオード(LED)や水素技術など幅広い産業において必要不可欠で、その調達は欧州委が推進する欧州グリーン・ディール(2019年12月12日記事参照)において戦略上の重要性を持つ。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的な供給網の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈した。そこで、新型コロナウイルスによる危機からの復興や欧州委の優先政策のデジタル化および、より環境に配慮した経済への長期的な移行を促すことを目的として、欧州委はこのコミュニケーションを通じて、行動計画を示すなど重要な原材料のより安定的かつ持続可能な供給のための基盤整備の方向性を示した。
産業界などを巻き込んだ行動計画を策定
こうした原材料の確保のためには、EUや加盟国政府だけでなく、地方政府や企業が協働して直ちに行動を起こす必要があることから、このコミュニケーションでは以下の各目標に合わせ行動計画を策定している。
- EUの各産業に必要な回復力のあるバリューチェーンの構築:再生可能エネルギーや防衛分野に必要なレアアースの供給網の強化などを目指し、EU機関や加盟国、産業界や投資家などが連携するための、欧州原材料アライアンス(European Raw Materials Alliance)の立ち上げ(2020年第3四半期)など。
- 資源、持続可能な製品、技術革新の循環的な利用による主要な原材料への依存の軽減:欧州地域開発基金やEUの研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」を利用した廃棄処理、先進素材、代替原料の開発プログラムの立ち上げ(2021年)など。
- EU域内での持続可能かつ十分に社会に配慮したかたちでの原材料の採掘や加工の強化:EU域内の産炭地域などを中心に2025年までに運用開始可能な採掘・加工計画などの選定、また産炭地域の2022年以降のより環境に配慮した社会への移行政策のための採掘・加工技術の開発など。
- ルールに基づく貿易の強化や、国際貿易への悪影響を排除し、持続可能かつ十分に社会に配慮したかたちでの第三国からの原材料の調達の多様化:EU域内で産出できない原材料などの安定的な供給のために、第三国とのパートナーシップの強化など。
また、このコミュニケーションには、定期的に見直されるEUの2020年度版の「重要な原材料」一覧が含まれている。詳細は添付資料を参照。
(吉沼啓介)
(EU)
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