欧州委、初のワクチン事前購入で合意、英アストラゼネカと
(EU、英国)
ブリュッセル発
2020年08月18日
欧州委員会は8月14日、新型コロナウイルス対策のワクチンに関して初となる事前購入で、英国製薬大手アストラゼネカと合意したと発表した。今回の合意は、同社が開発中のワクチンの安全性および新型コロナウイルスに対する有効性が承認された場合に、欧州委がEU加盟国に代わり、同社からワクチンを購入する際の契約枠組みとなるものだ。同合意によると、欧州委はまず3億回分のワクチンを購入し、さらに追加で1億回分を購入することができる。
アストラゼネカは、英国オックスフォード大学と共同開発中のワクチンに関して、臨床試験の前期に当たる第I/II相試験の中間結果が良好なもので、後期に当たる第II/III相試験も既に始まっていると、7月22日に発表している。さらに今回の合意を受けて、同社は2020年末までのワクチン供給の開始を目指すとしている。
EUはワクチン戦略の下、製薬会社との協議を加速
今回の合意は、欧州委が6月に発表した新型コロナウイルスに関するワクチン戦略に沿ったものだ。同戦略には、EU加盟国への新型コロナウイルス対策支援となる27億ユーロ規模の緊急支援手段(Emergency Support Instrument)を用いて、加盟国へのワクチンの供給を確保することともに、ワクチンの開発や承認プロセスを加速させる狙いがある。ワクチンの調達交渉を、加盟国が個別に行うのではなく、EUが一括して行うことで最良の条件での購入契約を目指すとともに、ワクチンの特定量の購入権と引き換えに、ワクチン開発に必要な先行投資コストの一部を負担することで、ワクチンの開発と生産を支援する。
今回の合意は、EUによるワクチン候補の事前購入合意に至った初めての事例となるが、欧州委はフランスのサノフィと英国グラクソ・スミスクライン(GSK)の共同開発プロジェクトや米国ジョンソン・エンド・ジョンソンとも、それぞれ事前購入合意に向けて予備的協議を進めていることを公表している。
(吉沼啓介)
(EU、英国)
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