英国政府、移行期間終了後の新排出権取引制度を提案
(英国)
欧州ロシアCIS課
2020年06月08日
英国政府は6月1日、EU離脱(ブレグジット)の移行期間終了後に向けて、欧州排出権取引制度(EU−ETS)に代わる英国独自の新しい排出権取引制度(UK-ETS)を提案した。UK−ETSは、英国が掲げる目標である2050年までに温室効果ガス(GHG)の純排出ゼロ(注)を達成するための重要な制度と位置付けている。
排出権取引制度は、GHGを削減するために排出枠を設け、余剰排出量や不足排出量を取引できる仕組みを構築し、違反者には罰金などを科すものだが、英国排出権取引制度(UK-ETS)には、欧州排出権取引制度(EU-ETS)の枠組みで、英国に割り当てられていた2021-2030年の排出枠を5%引き下げる計画が含まれており、現在のEU-ETSよりも厳しい内容を目指すとしている。鉄鋼、発電、航空などのエネルギー集約型産業が排出できるGHGの排出総量に限度枠を設定することでGHGの排出量を削減する。また制度の定着に合わせ、排出限度量を引き下げていき、気候変動対策への取り組みを加速させるとしている。クワシ・クワルテング ビジネス・エネルギー・クリーン成長担当閣外相はUK-ETSの提案にあたり「英国は気候変動への取り組みにおいて世界のリーダーであり、移行期間を終えることで、(EU加盟国であったときより)環境対策をより積極的に、迅速に進めることができる。UK−ETSは2050年までにGHGの純排出ゼロの達成に向けた取り組みに対し重要であり、企業に対してはスムーズな移行を提供する。」と述べた。
また、政府は双方の利益に合うならば、UK−ETS とEU−ETS間のリンクの検討もいとわないとし、英国とEUの間で現在進行中の将来関係の交渉の対象になるとした。
COP26の新日程に合意
英国政府と国連気候変動枠組み条約国事務局(UNFCCC)は5月28日、2020年11月に開催を予定していた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26、開催地:英国グラスゴー)について、2021年11月1~12日に開催すると発表した。なお、COP26は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2021年に延期されることが4月1日に発表されていた。
発表の中でアロク・シャーマ ビジネス・エネルギー・産業戦略相兼COP26担当相は「現在は新型コロナウイルスの差し迫った危機との戦いに焦点がおかれているが、気候変動の大きな課題を見失ってはいけない。COP26の新しい開催日が合意された今、私たちは国際パートナーと協力して、2021年11月までに地球規模の気候変動対策に関する野心的なロードマップを策定する。誰もが気候変動対策に取り組むための志を高く持つ必要がある。」と述べた。
(注)人間の活動によって排出される温室効果ガス(GHG)の量を森林などで吸収されるレベルにまで抑えること。
(宮口祐貴)
(英国)
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