新型コロナウイルス対策の出口戦略のロードマップ公表
(EU)
ブリュッセル発
2020年04月16日
欧州委員会と欧州理事会(EU首脳会議)は4月15日、新型コロナウイルスに対する各種制限措置の段階的な解除に向けた出口戦略としてのロードマップを公表した。
ロードマップではまず、制限措置の緩和時期が非常に重要だとして、そのタイミングは、疫学的な基準や十分な医療体制のキャパシティー、感染者の検査・追跡態勢の整備を含むウイルスの拡散状況の適切な監視の確保という3つの観点から、各加盟国が自国の状況を踏まえて適正な判断を行うべきとしている。
データとデジタル技術の活用を掲げる
実際に制限措置の緩和を進めるに当たり、ロードマップでは、必要となる付随的措置を列挙し、その中でも第1にデータの収集、第2に感染者との接触を防ぐためのモバイル・アプリケーションの活用を掲げている。データ収集に関しては、各加盟国の保健衛生機関からの情報だけでなく、ソーシャル・メディアやモバイル・ネットワーク事業者の所有する各種データも、ウイルスの拡散状況を把握し各国の措置の効果を適切に評価するために有益となり得ると指摘した。モバイル・アプリケーションに関しては、人の移動を追跡する技術を用いて、感染者との接触を未然に防ぐことの有用性を挙げ、EUワイドでこうしたアプリケーションが機能することを奨励している(注)。ただし、データやモバイル・アプリケーションの利活用に際しては、データの匿名性を確保し、統計的に処理することが前提だとして、EUのデータ保護およびプライバシーに関する規制と整合的でなければならないことを強調している。
加盟国の出口戦略に8つの提言
ロードマップでは、欧州疾病予防管理センター(ECDC)と欧州委員会の新型コロナウイルスに関する諮問パネルの科学的助言を基に、加盟国が制限解除で考慮すべき提言を以下のとおりまとめている。
- 制限解除が段階的に実施され、その影響を測定する十分な時間が確保されること
- 高齢者や慢性疾患のある高リスクグループなど、より必要度の高い者の保護を維持しつつ、その他のグループへの制限を解除すること
- 国内の地域的な状況を踏まえ、解除の対象を地域レベルから徐々に広域化させること
- 域内の国境制限の解除を加盟国間で協調的に実施した上で、次の段階としてEU域外との国境措置緩和に進むこと
- 経済活動の再開は、安全を確保すべく段階的に実施すること
- 市民の活動制限の解除は、学校、商業施設、飲食店、大規模集会など、活動ごとの特性を考慮した方法で漸進的に進められること
- ウイルス拡散を防止するための取り組みは維持されること
- 国内の状況を継続的に監視し、必要あれば制限措置の再開に備えること
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、欧州理事会(EU首脳会議)のシャルル・ミシェル常任議長とともに臨んだ記者会見で、「ロードマップは、今すぐ制限解除され得るというシグナルではなく、各加盟国の判断のための大枠を提供することが目的」と述べ、各国の状況に応じた段階的な対応を推奨することを強調した。
(注)欧州委員会は4月8日に、「新型コロナウイルス感染症危機に対峙(たいじ)し脱却するための技術とデータ、とりわけモバイル・アプリケーションと非特定化されたモビリティーデータ利活用のためのEU共通ツールボックスに関する勧告」を採択している。
(安田啓)
(EU)
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