インド政府、原産地証明の検証厳格化の動き
(インド)
ニューデリー発
2020年03月31日
2月1日に発表されたインド政府の2020年度(2020年4月~2021年3月)予算案の中で、貿易協定の原産地規則に係る運用について、原産地証明の検証を強化する方針が示された。4月1日を施行予定日とする財政法改正案の中で、関税法の中に「Administration of rules of origin under Trade Agreement(貿易協定における原産地規則の執行)」という章を加えるとされている。現行の制度では原産地証明に当たって輸入者には輸出国の認定機関からの原産地証明書を提出することが求められているのみだったが、今後は原産地証明書を取得しただけでは輸入者としての責務を果たしたことにはならず、書類や情報が追加で求められる場合がある。これを受けて、経済産業省は3月13日、「日インド包括的経済連携協定に基づく原産地証明書の利用上の留意点について」とする注意喚起を発した。
新設章は11の条項からなり、主なポイントは以下のとおり。なお、本文はインド財務省ウェブサイトより確認できる(「Finance Bill」内36ページより記載の第108条)。
(1)情報の保持と注意義務
○貿易協定に基づく特恵税率を申告する輸入者は、製品が当該協定の原産品として適格であることを宣言し、域内原産割合や品目ごとの基準などの原産品であることを示す十分な情報を保持しなければならない。また、これらの情報の正確性や真実性について注意義務を持つ。
(2)税関職員による追加情報請求と特恵税率の停止
○原産地基準を満たしていないと信じるに値する理由がある場合、税関の職員は輸入者に対してさらなる情報の提出を求めることができる。輸入者が必要な情報をなんらかの理由で提供できない場合、職員はさらなる検証を行ったり、検証を保留し、一時的に特恵税率の適用を停止したりすることができる。
○特恵税率の適用が停止となった場合、税関職員は輸入者からの要望に基づき、一般税率と特恵税率の差額を担保に物品を引き渡す。また、税関職員は保証金として差額の納入を命ずることができる。
(3)特恵税率の適用が否認される事例
以下の場合には、検証することなく特恵税率の適用を否認することができる。
・輸入品が特恵税率の対象ではない場合
・原産地証明書に記載されている情報が不十分である場合
・原産地証明書の記載内容の変更が証明書の発給当局において認証されていない場合
・有効期限後に原産地証明書が提出された場合
(4)原産性が否認された産品と同一産品の輸入にかかる特恵税率の否認
○輸入品が原産基準を満たさないと判断された場合、税関職員は同じ生産者または輸出者からの同種の産品について、十分な情報が提供されない限り特恵税率の適用を否認することができる。
具体的な追加書類の内容やどのような検証が行われるのかといった点については明確にされていないが、輸出入業者はインド政府の動向を注視するとともに、原産地証明にかかる関連書類の整備、照会があった場合に対応できるよう準備をする、証明書上の記載に不備がないか確認を強化するなど、厳格化に備えた対応をする必要がある。
(磯崎静香)
(インド)
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