欧州委、「信頼性」と「優越性」を追求するAI戦略を発表

(EU)

ブリュッセル発

2020年02月21日

欧州委員会は2月19日、デジタル政策の方針を示したコミュニケーション(政策指針)「欧州のデジタルの未来を形成するPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」と、その具体的施策の第1弾となる「人工知能(AI)白書―卓越性と信頼に向けた欧州アプローチPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」と「欧州データ戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。

コミュニケーション「欧州のデジタルの未来を形成する」は、「人々のための技術」「公正で競争力のある経済」「開かれた民主的かつ持続可能な社会」の3点を今後5年間のデジタル分野における目標として掲げ、デジタル技術の開発と、気候中立(二酸化炭素排出実質ゼロ)目標に向けたデジタル技術活用のアプローチが盛り込まれた。気候中立に関しては、デジタル技術の省エネへの応用に加えて、例えば、データセンターと通信産業について、省エネや再生可能エネルギー利用を促進し、2030年までの気候中立実現を目指すべきとした。

欧州は安全に利用できるAIの世界的リーダーを目指す

欧州委は「AI白書」において、「欧州は安全に利用・応用できるAIシステムの世界的リーダーとなるべき」とし、市民の価値観と権利を尊重した安全なAI開発の「信頼性」と「優越性」を実現するための政策オプションを示した。官民の協力によってAIのバリューチェーン全体で、人材の誘致・定着を含む資源配分によるAIの普及加速の促進を図る一方で、AIシステムの複雑さとリスクを鑑みて、信頼の醸成に向けてEUの従来の消費者保護や競争、個人データ保護ルールに加えて、高リスクのAIに関するルール導入の必要性を指摘した。

欧州委は、高リスクのAIとして医療や警察、運輸分野などでの応用を挙げ、透明かつ追跡可能で、人間による監督の保証がされるべきだと述べた。さらに、監督機関がアルゴリズムの開発に利用されるデータを試験・認証できるようにすべきだとした。偏りのあるデータによるシステムの不具合や、差別など基本的人権の侵害を懸念している模様だ。また、顔認証技術については、どのような場合に利用が認められるのか幅広い議論を喚起したいと述べた。なお、欧州委は、低リスクのAIについては、信頼性向上のための自主的なラベリング制度の導入を想定している。

欧州委は、5月19日までの「AI白書」に関する公開諮問を開始。この結果を受けて、2020年中に安全性や製造物責任、基本的人権などを含むAIに関する法の提案が行われる予定だ。また、AI以外の分野についても、順次、法案や行動計画などの提案を行う予定だ。

(村岡有)

(EU)

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