バルニエ首席交渉官、今後の対英交渉のカギに言及
(EU、英国)
ブリュッセル発
2020年01月28日
欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は1月27日、北アイルランドの首都ベルファストで講演を行い、英国のEU離脱(ブレグジット)に関して英国が離脱協定案を承認した結果、秩序ある離脱を何とか確保したとの認識を示したが、離脱後に始まる移行期間については「11カ月は短過ぎる」と指摘。英国側が移行期間の延長に合意しない場合、結局は合意のない離脱(ノー・ディール)のリスクがあるとして危機感を示した。
英国がどこまでEUルール・基準に準拠するかが今後の協議のカギ
バルニエ首席交渉官は講演で、ブレグジットをめぐるこれまでの論議や課題を整理し、EU側の立場や認識を説明した。同時に英国側の立場やその背景にも理解を示しつつ、「英国がEUおよび単一市場からいつ離脱するのか、欧州の社会基準、規制モデルからも離脱する選択をするのかが不明確」であり、「英国の回答待っている」と語り、この論点をめぐる英国の回答が今後のEU・英国の将来関係を構築する上でカギを握ると述べた。具体的には、英国がEUの国家補助や社会・環境基準などを下回る水準の政策を掲げる場合、EU単一市場への質の高いアクセスを期待することはできないと忠告。英国がEUに対して法令・基準などの面で公平な競争条件を認めなければ、単一市場へのアクセスも得られなくなるという相互主義の原則をあらためて打ち出した。
こうした発言の背景には、今後、欧州委員会などが主導して具体的な法令や政策整備を進める「欧州グリーン・ディール」(2019年12月13日記事参照)や「デジタル化政策」などを含むEUの標準や規制を英国が受け入れず、EUに対する競争上の優位な立場を確立することに対する強い警戒感があるとみられる。
また、首席交渉官は、英国がブレグジットで意図するグローバル・ブリテンに対して、「加盟国のグローバル化に貢献したのは、むしろEUだ」「英国がいなくても、EUは人口4億5,000万の単一市場という真の国際市場を形成している」と指摘した。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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