USMCA実施法案が米上院で可決、発効は当分先との見方も
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2020年01月17日
米国議会上院は1月16日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)実施法案(HR5430)を賛成多数で可決した。大統領の署名をもって米国内の批准手続きは完了するが、残るカナダが早期に批准したとしても、自動車分野の運用規則が定まっておらず、発効は2020年夏以降との見方もある。
法案は圧倒的多数で可決
上院は1月15日に、当初予定がなかったUSMCA実施法案の審議を開始した。上院ではトランプ大統領の弾劾裁判終了後に審議するとみられていたが(2019年12月20日記事参照)、下院が弾劾訴追決議を上院に提出したことで進展がみられたため、ミッチ・マコーネル上院院内総務(共和党、ケンタッキー州)が急きょ、USMCA実施法案審議を表明した。
翌16日に行われた採決の結果、法案は賛成89票、反対10票で可決された。下院と同様、交渉を行った政権側の共和党と、修正交渉を主導した民主党による超党派の支持を集めたかたちだ。反対は、パット・トゥーミー上院議員(共和党、ペンシルベニア州)以外の9人は民主党議員で、大統領選候補であるバーニー・サンダース上院議員(民主党、バーモント州)は気候変動への対応などが不十分として反対に回った。一方、エリザベス・ウォレン上院議員(民主党、マサチューセッツ州)は、USMCAがトランプ大統領が起こした貿易戦争の被害を軽減するとして賛成した。
USMCAは、米国とカナダ、メキシコが国内手続きを終え、最後に批准した国が通知を行った3カ月目の月の初日に発効することとなっているが、協定の細則を詰めるため通知はしばらく見送られる可能性がある。メキシコは批准済みだが、カナダの国内手続きはこれからとなる。
メキシコのヘスス・セアデ外務省北米担当次官は通商専門誌「インサイドUSトレード」のインタビュー(1月10日)に対して、「(協定上の)コンプライアンスを定める上で3カ国で決める事項が相当残っている」として、2020年夏までは発効しないとの見通しを示した。また、セアデ次官は、自動車分野の原産地規則に関わる具体的な解釈や適用方法、手続きなどを定めた統一規則が仕上がるまでに「数カ月を要する」とみている。
(藪恭兵)
(米国、カナダ、メキシコ)
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