USMCAの修正議定書に署名、政府・上院はおおむね歓迎、産業界には不満も
(メキシコ、米国、カナダ)
メキシコ発
2019年12月11日
メキシコのヘスス・セアデ外務省北米担当次官、米国のロバート・ライトハイザー通商代表部(USTR)代表、カナダのクリスティア・フリーランド外相は12月10日、メキシコ市の国立宮殿において、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の内容を一部修正する議定書にサインした(2019年12月11日記事参照)。おおむねメキシコ政府が12月9日に米国政府に伝えた方針(2019年12月10日記事参照)に沿ったもので、政府および上院は合意を歓迎している。
アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は署名式典において、修正合意が成立して、米国における批准審議が進む見通しが高まったことを受け、「この合意を可能にした全ての関係者に感謝する。長期間にわたって複雑で困難な課題に一緒になって取り組み、可能な限りより良いかたちで相違を乗り越えた交渉官たちに感謝する」と述べ、特に米国のライトハイザーUSTR代表とカナダのフリーランド外相、メキシコのセアデ次官の功績をたたえた。
他方、メキシコ雇用者連合会(COPARMEX)のグスタボ・デ・オジョ会長は、今回の修正議定書の合意形成において、経済界の代表である国際交渉戦略委員会(CCENI)やCCENIが形成するサイドルーム(交渉官に対する民間アドバイザーグループ)に対する意見聴取が一切行われなかったことに不満を表明している。
完成車メーカーの鉄鋼70%調達要件の厳格化は発効7年後から
今回の修正議定書の交渉では当初、完成車メーカーが調達する鉄鋼およびアルミニウムの70%以上が域内原産品でなければならないというルールの厳格化要請が米国政府からあり、域内で鋳造工程から行われた鉄やアルミを70%調達しなければならないとされたが、このルールについて、最終的には鉄は発効後7年間の猶予期間が与えられ、アルミについては当面は厳格化の対象外とし、発効後10年の間に厳格化するかどうかを3カ国で決定することとなった。式典後に実施された外務省記者会見の会見録で明らかになった。
なお、ジェトロが経済省の原産地規則交渉官に12月10日に確認したところ、域内で鋳造工程が行われた鉄のみを原産品として扱うルールは、あくまで協定第4章付属書第6条が定める「完成車メーカーの鉄鋼・アルミニウム調達要件」に関するもので、鉄鋼自体の品目別原産地規則(付属書4-B)を変更するものではない。従って、自動車部品メーカーなどが自社製品に用いる鋼材の原産性を判断するルールには変更はなく、炭素鋼の鋼材については熱延工程からの域内原産が求められ(スラブやビレッドの原産国は問わない)、特殊鋼(合金鋼)の鋼材についてはスラブやビレッドも含めて域内産を用いないと原産品とならない(改定議定書の要求水準と変わらない)。
(中畑貴雄)
(メキシコ、米国、カナダ)
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