米下院、日米貿易協定に関わる公聴会を開催

(米国、日本)

ニューヨーク発

2019年11月21日

米国下院貿易小委員会は11月20日、日米貿易協定に関わる公聴会を開催した。出席した民主党議員は、議会との事前調整や承認が行われなかったことや、公聴会にロバート・ライトハイザー米国通商代表部(USTR)代表が不在なことを非難した。他方、協定の内容については両党議員から、農産品の対日市場アクセス改善を評価する意見が聞かれた。

議会軽視との非難が相次ぐ

公聴会の冒頭、議事進行役のアール・ブルメナウアー貿易小委員長(民主党、オレゴン州)は「大統領貿易促進権限(TPA)法に基づけば、貿易協定の交渉妥結前に議会と意見調整すべきところ、今回はそれが全くなかった」と、トランプ政権が議会を尊重しなかったことを非難した。ビル・パスクレル議員(民主党、ニュージャージー州)も「最終的な決定権は議会にあるはず」と述べ、具体的には協定の原産地規則について、TPA法の下で大統領は自由に決定を行う権限は与えられていないと指摘した。

これについて、証言者として出席したマシュー・グッドマン戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長は「今回の協定は議会迂回を意図したとの懸念があり、自分は法律の専門家ではないものの、憲法に照らせば議会との調整は必要」と述べた。同じく証言したダルシ・ベッター元USTR農業首席交渉官も「環太平洋パートナーシップ(TPP12)交渉における日本との農業交渉は厳しいものだったので、議会および農業関係者の意見が必要だった」と同調した。加えて、ロン・カインド議員(民主党、ウィスコンシン州)やステファニー・マーフィー議員(民主党、フロリダ州)は、米国側の交渉主体だったライトハイザーUSTR代表らの出席がないことに不満を示した。

両党は農産品の市場アクセス改善を評価

農産品の市場アクセスについては、民主・共和両党から支持する声が目立った。ジミー・パネッタ下院議員(民主党、カリフォルニア州)は「ワイン、牛肉、切り花などの(日本側)関税が撤廃される」と歓迎したほか、他議員からも、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)や日EU経済連携協定(EPA)に加盟する国々に対する劣後が解消されることを肯定する意見が上がった。公聴会で証言を行ったテキサス農業団体のラッセル・ボーニング会長は「農産品の対日輸出141億ドルのうち52億ドル分は無税だが、今回の協定でさらに72億ドル分が関税撤廃される」と、協定のメリットを述べた。

米国のCPTPP復帰を望む声も

他方で、グッドマンCSIS上級副所長は、日米が過去何十年にもわたり、APECなどの場を通じて、自由で開かれたルールに基づく世界経済秩序をリードしてきたことに触れ、米国は、CPTTPに復帰すべきで、これによりインド太平洋地域に対する米国のコミットメントを示すものとなると指摘した。

(藪恭兵)

(米国、日本)

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