英国議会が新会期入り、女王演説で10月末のブレグジットを強調
(英国、EU)
ロンドン発
2019年10月15日
英国議会は10月14日、新会期に入った。冒頭の開会式で慣例によりエリザベス女王が政府の方針について演説。26法案が提示され、うち7法案が英国のEU離脱(ブレグジット)に関連するものだった。演説の草案は政府が作成する。
エリザベス女王は演説の冒頭、「政府の最優先事項は一貫して10月31日のEU離脱(ブレグジット)を実現すること」と述べて、ボリス・ジョンソン首相の決意を代弁。「自由貿易と友好的な協調に基づく」EUとの新たな協力関係を目指すと続け、EUの関税同盟や単一市場からの離脱を目指す政府の姿勢を強調した。このほか、EUの共通農業政策(CAP)や共通漁業政策(CFP)、人の移動の自由と決別し、独自の通商政策を展開することなど、ブレグジットによって「主権を取り戻す」という従来の主張に沿った方針を示した(表参照)。ブレグジット以外では、医療や治安、インフラなどジョンソン政権発足から重点を置いてきた分野(2019年7月26日記事参照)を引き続き重視している。
最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は議会で、「過半数を45議席も割り込み、議会採決で全敗している中で、可決されないと分かっている法案を示すとは、過去に類のない茶番」と一蹴。ブレグジット延期後に議会解散・総選挙に応じる意向を示すとともに、与党・保守党への対決姿勢をあらわにした。
経済界では、英国産業連盟(CBI)のジョシュ・ハーディ政策担当事務局次長が声明で、政府の国内政策は企業を刺激し成長に寄与するなどと評価。しかし、「女王演説に示された野心的な目標を実現するためには、EUと密接に連動した新たな関係を築くことにつながる合意を実現すべき」と続け、政府にくぎを刺した。英国商工会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長も「混乱と無秩序を伴う合意なきEU離脱(ノー・ディール)を回避しなければならないという経済界の声は、国民投票時から全く変わっていない」と述べ、政府を牽制している。
アイルランド島の国境管理の方策(2019年10月3日記事参照)をめぐる英国とEUと協議は、ジョンソン首相とアイルランドのレオ・バラッカー首相との間で10月10日に行われた首脳会談で事態好転の可能性が取り沙汰されたが、協議はなお続いており、予断を許さない。
ジョンソン首相は8月下旬に、9月9日の週から約5週間にわたる議会閉会を強行したが、最高裁判所が違法で無効と判断。議会は9月25日から再開したものの(2019年9月26日記事参照)、長引くブレグジット審議によって2017年6月21日から2年以上も続く会期を終えて新たな施策を提示するため、新会期入りした。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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