欧州委、ブレグジットめぐる英国新提案の課題を指摘
(EU、英国)
ブリュッセル発
2019年10月03日
欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は10月2日、英国のボリス・ジョンソン首相と電話会談で、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる、英国側の新たな提案(2019年10月3日記事参照)について協議した。同日に欧州委員会が発表した声明によると、今後、欧州委として客観的に新提案を精査するが、同委員長は「バックストップ条項」や(北アイルランド地域における)通関手続き運用については依然として課題・懸念があると指摘している。
ユンケル委員長は、ジョンソン首相が10月17~18日にブリュッセルで予定されている欧州理事会(EU首脳会議)に先駆けて協議を進める決断を歓迎した。特に今回の新提案で、英国本土から北アイルランドに持ち込まれる全ての商品について完全にEU基準・ルールに準拠させる方針が示された点に、前向きな進展を認めた。
しかし、北アイルランド地域での国境管理の厳格化を回避するための「バックストップ条項」(2019年9月19日記事参照)の取り扱いについて、同委員長は「今後、数日中にさらなる検討を要する幾つかの課題がある」と指摘。また、別の課題として、北アイルランド地域での「通関手続きの在り方」についても、厳格な国境管理の回避、アイルランド島の南北間協力と全島経済の維持、およびEUの単一市場と単一市場におけるアイルランドの位置付けの保護などを法的に運用可能とするための解決策が必要であるとして、英国側の新提案を直ちに受け入れる状況にないことを示唆した。
今後、欧州委はブリュッセルで数日間、英国側との協議を継続する。協議の状況については、欧州理事会および欧州議会に逐次、報告するとしている。また、ユンケル委員長は、これらの問題の影響を大きく受けるアイルランドのレオ・バラッカー首相の意見を入念に聞く予定だという。
また、欧州議会・ブレグジット問題対策グループの座長を務めるギー・フェルホフスタット議員(ベルギー選出)は同日、同グループとしては「ジョンソン首相の新提案を前向きには全く捉えていない」「アイルランドの立場について必要な安全策がとられていない」と指摘。その見解は10月3日に書面で表明するとツイッターに投稿した。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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