欧州議会の会派間で英国のEU離脱時期について温度差
(EU、英国)
ブリュッセル発
2019年09月17日
欧州議会の最大会派・欧州人民党(EPP)グループ(中道右派)のアントニオ・ロペス=イストゥリス・ホワイト幹事長(スペイン選出・欧州議員)は9月13日、英国が10月31日にEUを離脱(ブレグジット)することを前提に、「ブレグジットに伴って、今後数カ月は厳しい時になりそうだ」と、英国オックスフォードで開催されたフォーラムで発言した。他方で、「どのような政治・経済シナリオになったとしても、これまで(英国を除く)EU27カ国が構築してきた強い結束で乗り切れると確信している」「われわれ(EU)の準備はできている」とした。
EU側も立場により現状認識に温度差
ホワイト幹事長は欧州債務危機を克服したEUの歴史にも言及し、「われわれは常に危機を好機に変えてきた」「欧州は連携して課題を解決し、前進してきた」と自信を見せた。また、11月1日以降の新たな欧州幹部にとってのプライオリティーとして、気候変動やデジタル分野などの経済政策を挙げ、「英国がEUを離脱すると、欧州議会は親EU勢力がより強固になる」とも指摘。ブレグジット再延期の可能性などについては言及しなかった。
前日の12日には、欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官が欧州議会の主要会派代表に対して、ブレグジット問題をめぐる最新状況を報告した。北アイルランド地域での国境管理の厳格化を回避するためのバックストップ条項(2019年8月21日記事参照)について、「離脱協定に矛盾することなく法的に機能する対案が(英国に)あるならば、検討する用意はある」と英国に伝えており、「ボールは英国側にある」ことを強調。「EU側が望むものではないが、(このまま英国が適切な代案を提示できなければ)合意なき離脱(ノー・ディール)のリスクは排除できない」と指摘した。
他方、欧州議会で第二会派を形成する社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループ(中道左派)は9月12日付の声明で、「欧州議会内の親EU会派代表者は、英国が合意のない離脱に追い込まれる事態を回避するため、ブレグジット再延期を支持することを確認した」と発表した。S&Dのイラチェ・ガルシア・ペレス代表(スペイン選出)は「(合意なき離脱が)港湾での貨物の滞留、医薬品の供給不足、食品価格の上昇など、英国政府のこれまでの分析を見ても、市民にとって明らかに悪影響を引き起こす」と指摘。「英国が総選挙や国民投票の再実施などのために時間が必要なのであれば、これは保障されるだろう」「私たちはブレグジットを歴史的な失策とみており、これが覆されることを望んでいる」と語った。S&Dグループは、特にノー・ディールの場合にEU市民の英国での権利保障が停止される事態を強く警戒しており、英国内務省が9月5日付で出した「ノー・ディール時のEU市民の英国への渡航対応」と題する声明について、矛盾と混乱を与える内容で、英国で生活することを選択した数百万の人々にストレスと不透明感をもたらしていると批判している。
なお、欧州議会は、バルニエ首席交渉官を9月18日に議会に招致してブレグジット問題について協議し、何らかの決議をするとみられる。
(前田篤穂)
(EU、英国)
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