ジョンソン首相、EU離脱延期法案可決、解散動議否決で議会に2連敗

(英国、EU)

ロンドン発

2019年09月05日

英国下院で9月4日、10月31日の英国のEU離脱(ブレグジット)をさらに延期することに道を開く法案(2019年9月3日記事参照)が賛成327票、反対299票で可決された。政府はこれを不服とし、民意を問うための議会解散を求める動議を提出したが、賛成は298票にとどまり、解散に必要となる下院総議席数(650席)の3分の2(434票)には遠く及ばなかった。合意の有無にかかわらず、同期限に離脱することを最大の目標に掲げていたボリス・ジョンソン首相にとって、大打撃となった。

前日の9月3日には、議会が4日の議事進行を政府に代わって管理する法案がジョン・バーコウ下院議長の裁定で審議にかけられ、賛成328票、反対301票で可決されていた。同法案は、4日に離脱延期法案を審議する前提となるもので、政府は造反議員を除名する方針を示して締め付けを図ったが、与党・保守党から21人が同法案に賛成。造反議員と、議会審議中に野党・自由民主党に転籍した議員1人を含めた計22人が保守党を離れ、与党は過半数を大きく下回ることになった。

ジョンソン首相は、総選挙に勝利することで大義を得て、あらためて10月31日のEU離脱を目指すことをもくろんだが、野党は離脱延期法案が上院も通過し、正式に施行されることを優先。議会解散の動議を退けた。他方、上院では、離脱延期に反対する議員らが100前後の修正案を提出して時間稼ぎをしており、9月9日の週に議会が休会される前に法案が成立するかは、なお予断を許さない。

離脱延期法案には、複数の修正案も提出されていた。そのうち、5月21日にテレーザ・メイ首相(当時)が公表した新提案(2019年5月22日記事参照)を踏まえ、政治宣言の修正などを行った離脱協定法案を議会で審議・通過させることを、EUへの離脱延期要請の目的として明示することを求めた修正案が、採決の集計係が不在だったために可決されるという異例の事態も起こった。英国メディアによると、この修正が加わったこと自体は大きな影響はないとの見解もあるが、議会の激しい混乱を象徴している。上院の審議に加え、ジョンソン首相も新たな対抗措置を打ち出してくる可能性もあり、状況はなお流動的だ。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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