海外雇用省の設立法案、成立先送りか
(フィリピン)
マニラ発
2019年09月11日
フィリピンの国家経済開発庁(NEDA)のアーネスト・ペルニア長官は9月5日、ドゥテルテ大統領が6月の施政方針演説(SONA)で、その成立の重要性を訴えた海外雇用省の設立法案について、今国会で審議されるべき優先法案ではなく、審議には数年の年月が必要との意見を、上院の開発予算調整委員会において表明した。
同法案は、(1)労働雇用省(DOLE)傘下の海外雇用庁(POEA)、海外労働者福祉局(OWWA)、国際労働局(ILAB)、大統領府傘下の海外移住委員会(CFO)、外務省など、現在複数の省庁・機関が所管するフィリピン人による海外労働に関する権限や許認可の、新しく創設する単一の省への一元化、(2)海外労働のための手続きに関するワンストップ窓口の創設、(3)海外で働くフィリピン人(OFW)の保護や医療サービスの提供、(4)194億ペソ(約407億円、1ペソ=約2.1円)の海外雇用ファンドの設立を求めるものだ。
DOLEの元長官であるフランクリン・ドリロン上院議員は、DOLEが作成した本法案が、DOLEの「国内のより良い労働環境の整備を通じた、OFWのフィリピンへの帰国促進」という従来の立場に逆行するものだとした上で、「特に194億ペソの海外雇用ファンドの設立は、政治家に対してさらなる裁量を譲渡し、新たな汚職を生み出すもので好ましくない」とコメントした。
一方で、DOLEは9月5日の上院開発予算調整委員会において、海外雇用省の設立は官僚主義を合理化するものだと説明。CFOのアストラベル・ピメンテル・ナイク次官は、約1,000万人存在するといわれる在外フィリピン人のうち41%を占め、家族への送金などの目的で一時的に海外で働くOFWだけでなく、さまざまな理由で海外に永住する48%の同胞を守るためにも同法案の成立が望まれる、とした。ドゥテルテ大統領は7月、非合法な雇用条件を課せられているOFWを一刻も早く保護するため、海外雇用省を2019年の年末までに設立する必要があるとする声明を発表した。
2018年のOFWを含む在外フィリピン人からのフィリピン国内に対する送金額(銀行送金ベース)は過去最高の289億4,300万ドル(前年比4.3%増)に達し、2019年上半期(1~6月)の送金額は前年同期比3.2%増の146億3,800万ドルだった(2019年8月22日記事参照)。
(坂田和仁)
(フィリピン)
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