FRBは金融政策の現状維持を決定、将来的な利下げを示唆
(米国)
ニューヨーク発
2019年06月21日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月18~19日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策の現状維持を決定した。フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は、2.25~2.50%に据え置かれた。今回の決定は、9対1の賛成多数だった。反対票を投じたのは、セントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁で、0.25ポイントの利下げを主張したとされる。
将来的な利下げを示唆する記述を声明文に追加
FOMCの声明によると、米国経済全般の判断について、労働市場は依然として力強く、経済活動は「緩やかなペースで拡大している」とし、前回の「底堅いペースで拡大した」という表現から下方修正した。また先行きについて、「(経済)見通しに関する不確実性は高まっている」との記述を追加した。パウエルFRB議長は、前回5月の会合以降、世界経済や貿易摩擦に対する懸念が高まり、「ベースラインとなる経済見通しを取り巻く不確実性が明らかに高まっている」と述べた。これに加えて、前回会合までの政策金利の調整には「忍耐強く(patient)なる」とした記述は削除する一方で、先行きの不確実性と抑制された物価上昇圧力を考慮すると、FOMCは「経済見通しに関して今後発表される情報が持つ意味を注意深く監視し、力強い労働市場や対称的な目標である2%近くの物価上昇、景気拡大の持続に向けて適切に行動する」と将来的な利下げを示唆する記述を追加した。パウエル議長は、多くのFOMCメンバーが、いくぶん緩和的な政策を正当化する論拠が強まってきたとみている、と述べた。
17人のうち8人のFOMC委員が2019年内の利下げを想定
FOMCメンバーによるFFレートの見通し(17人の委員メンバーの中央値)は、2019年、2020年、2021年、長期がそれぞれ2.375%、2.125%、2.375%、2.500%と、2019年3月会合時点から2020年が0.50ポイント、2021年と長期が0.25ポイントずつ引き下げられた(図参照)。1回当たりの利上げ幅を0.25ポイントとして、2019年の利上げ回数見通しは0回と変わらなかった。ただし、17人うち8人の委員が、前回から見通しを下方修正し、2.375%以下になるとしており、2019年内に1~2回の利下げを想定している。一方で、2020年については1回の利下げ、2021年は1回の利上げが行われる想定となっている。債券運用大手ピムコの米国エコノミストであるティファニー・ウィルディング氏は「最も驚いたのは、(2019年のFFレート見通しを前回会合から)利下げ方向に改定した委員が約半数もいたこと」とし、将来的な利下げはもはやリスクケースとは言えなくなってきたと述べた(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版6月19日)。
同時に発表された、2019年以降の実質GDP成長率、物価上昇率、失業率の予測中央値は、2020年のGDP成長率が前回予測から0.1ポイント引き上げられた一方で、2019~2021年・長期の失業率がいずれも0.1ポイント、2019~2020年の物価上昇率(PCE、コアPCE)が0.1~0.3ポイント引き下げられた(表参照)。
(権田直)
(米国)
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