メイ首相、7月のブレグジット目指し6月初旬に離脱協定法案採決へ

(英国、EU)

ロンドン発

2019年05月16日

テレーザ・メイ首相は5月14日夜、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり、最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首と会談した。首相はその中で、6月第1週(6月3日からの週)に離脱協定法案を議会採決にかける意向を伝えた。政府がEUとのブレグジット合意の議会通過を目指すのは、これで4回目。「フィナンシャル・タイムズ」紙(電子版5月14日)によると、議会日程や国外での行事により、議会採決は6月4日か5日に行われる可能性が高いとしている。ただ、3日から5日にかけては、米国のトランプ大統領が英国を公式訪問することになっている。

4月10日に開催された欧州理事会(EU首脳会議)で、再延期後の離脱日は「英国とEUが離脱協定を批准した翌月の1日か11月1日のいずれか早い日」とすることが決まっている(2019年4月11日記事参照)。メイ首相をはじめ主要閣僚らは、7月下旬に議会が夏季閉会する前に離脱することを目指しているおり、7月1日に離脱するためには、6月初旬に法案を通過させる必要があると判断した。

政府と労働党の協議(2019年5月10日記事参照)はなお続いており、政府はこれと並行して、5月14日にオリー・ロビンス首席交渉官をブリュッセルに送り、政治宣言の文言変更についてEUとの間で協議を始めている。労働党との協議がまとまらなければ、政府は複数の離脱案を採決にかける可能性もある。その場合、これまでに2度、議会主導で行われた代替案採決(2019年4月2日記事参照)とは異なり、採決を繰り返して離脱案を絞り込み、議会通過を狙う考えだ。

しかし、見通しが厳しいことに変わりはない。5月13日には閣僚経験者ら保守党有力議員14人が連名で、労働党が主張する(恒久的な)関税同盟に合意しないようメイ首相に要求した。合意すれば保守党議員の多くが反対に回り、それを上回る労働党からの支持は得られないことに加え、首相が交代すれば同意内容は覆えされるだろう、と警告している。こうした保守党内の動きによって、たとえ合意に至っても覆され得るとして労働党側でも協議に対して不信感が増している。

スチーブン・バークレーEU離脱担当相は上院のEU問題特別委員会で5月15日、議会の承認が得られなければ、現行の離脱案は実質的に廃案になるとの見方を表明。その上で、「議会は合意なき離脱(ノー・ディール)か、離脱撤回(ノー・ブレグジット)のどちらを追求するのかという、より根源的な問題に直面することになる」とコメントしている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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