EUのトゥスク常任議長、1年限度のブレグジット延期も

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年04月10日

欧州理事会(EU首脳会議)のドナルド・トゥスク常任議長は4月9日、ブリュッセルで翌10日に開催される臨時の欧州理事会(2019年4月8日記事参照)の招待状をEU加盟国首脳に送り、その中で英国のEU離脱(ブレグジット)について、「1年を限度とする柔軟な期日延長」を選択肢の1つとして提案した。

欧州産業界は柔軟な延長を支持

トゥスク常任議長は、これまでの英国議会の分裂を念頭に、仮にEUがテレーザ・メイ英国首相の6月30日までの離脱延長提案を承認したとしても、この期日までに英国が離脱協定案承認に向けたコンセンサスを形成することは困難とみており、さらなる短期延長と緊急首脳会議を繰り返すよりも、長期の延長を認めて事態打開を目指すべきとの思惑がある。同議長が提唱する「柔軟な延長」は、期日前であっても英国が離脱協定案を承認すれば、速やかにEUからの離脱を認める。

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は4月9日、「欧州産業界は合意なき離脱(ノー・ディール)を受け入れられない」とする声明を発表した。ピエール・ガタズ会長は「意図的なものでも、偶発的なものでも、ノー・ディールは無益であり、回避すべき」とあらためて強調した上で、ブレグジット期日の延長支持を表明した。同会長は具体的な延期期間には言及せず、「企業、特に中小企業の経営に不透明感(2019年4月8日記事参照)を永続させない範囲の期間であると同時に、秩序ある離脱と円滑なEU・英国の将来関係への移行を可能する程度の十分な期間」と定義している。

なお、トゥスク常任議長は「英国側(政治プロセス)の行き詰まりが続いた場合、長期の延期であれば、英国がブレグジット戦略そのものを見直すことも可能になる」としており、離脱撤回がいつでも可能であることも付言した。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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