USTR、2019年の通商政策課題にUSMCA批准、対中政策、対日・EU・英通商交渉

(米国)

ニューヨーク発

2019年03月07日

米国通商代表部(USTR)は3月1日、通商政策に関する年次報告書である「2019年の通商政策課題と2018年の年次報告」を議会に提出PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。主要課題として、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の米議会批准、中国による長年の不公正な貿易慣行に対する圧力の継続、日本・EU・英国との通商交渉の開始を挙げ、米国の輸出と雇用の拡大を目指すとしている。報告書ではまた、トランプ政権は、過去の政権から引き継いだ、米国企業と労働者が不正に不利な立場に置かれている、深刻な欠陥のある国際通商システムの是正に取り組んでいると指摘した。

USMCAに関しては、(従来の協定の)北米自由貿易協定(NAFTA)によって損なわれた米国企業や労働者の利益を米国に取り戻し、カナダ、メキシコとの不均衡な通商関係を是正する協定だと記載した。またUSMCAは、労働や環境、為替操作、知的財産、デジタル貿易などの重要課題について、米国が交渉した最も先進的な貿易協定だとし、米国が今後締結する貿易協定の新たな模範になるとしている。USMCAには、非市場経済国とのFTA交渉に一定の制限をかける条項があり、条文上では具体的な国名を記載していなかったが、本報告書では、非市場経済国として中国を名指しした。なお、USMCAの議会批准は、2019年の最優先課題の1つだと明記した。

中国による米国の知的財産の侵害に関しては、1974年通商法第301条に基づくUSTRの調査で、米国企業に対する中国の強制的な技術移転政策が認識された結果、これら不公正な貿易慣行や政策を是正するために対中追加関税を発動したと記載した。また、強制技術移転や知的財産保護、非関税障壁、サイバー攻撃(侵入・窃盗)、サービス、農産物に関わる構造問題について2国間交渉中で、これまでに中国が米国産農産物、エネルギー、工業製品などの購入拡大に合意したとしている。また、米国と同じ価値観を共有する日本やEUと連携して、中国の不公正な貿易慣行の是正に取り組むとしている。

日本との通商交渉に関しては、関税障壁および非関税障壁の撤廃と、より公平かつ均衡のとれた互恵的な通商関係を目指すとしている。特に自動車、農産物、サービス分野における、複雑な関税や非関税障壁が、米国の対日貿易不均衡を拡大しているとの見解を示した。また、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)や日EU経済連携協定(EPA)の加盟国を念頭に、日本市場では米国の輸出者が他国競合相手よりも、価格面で不利な立場に置かれているとの認識を示した。

そのほか、WTOの一部の規則は、現代の通商課題や不公平な貿易慣習に対応しきれていないとし、多角的貿易体制の枠組みは機能していないとの認識を示したほか、トランプ政権は今後もアンチダンピングや相殺関税の執行を継続していくとも記載した。

(須貝智也)

(米国)

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