メイ首相がEUからの確約引き出すも、英国議会の反発変わらず
(英国、EU)
ロンドン発
2019年01月15日
英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる英国議会での採決を翌日に控えた1月14日、英国政府とEUは、テレーザ・メイ首相と欧州理事会(EU首脳会議)のドナルド・トゥスク常任議長、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長の間で交わされた書簡を公表した。北アイルランドとアイルランド間の国境問題をめぐる安全策(バックストップ)に対する議員の反発を鎮め、採決で政府合意への支持を得る狙いだ。
メイ首相は書簡の中で、バックストップはあくまでも暫定的なもので、永続的な将来協定の協議は双方が合意に署名した後ただちに開始するとした、先の欧州理事会の総括における指針などをあらためて確認(2018年12月17日記事参照)。加えて、新たな将来協定に合意した後に批准手続きが間に合わない場合は、バックストップ発動よりも、新協定の暫定適用を優先することなどを提案した。さらに離脱協定の共通解釈として、発動された場合でも、北アイルランドでのEU法令適用は最低限にとどめることなどを提案している。
これに対して、欧州理事会のトゥスク常任議長と欧州委のユンケル委員長は返答の中で、欧州理事会の総括は法的価値を持つことを確認し、将来協定の早期協議開始などに同意。将来協定の暫定適用や北アイルランドにおけるEU法令の限定的適用などについても、メイ首相の提案に同意した。英国のジェフリー・コックス法務長官はこれらを踏まえ、EUがバックストップ発動を望む可能性は低いと結論付け、現在の離脱協定案が政治的に実現し得る唯一の合意とする見解を示した。
しかし議会の反対勢力が、この書簡によって態度を軟化させる様子はみられていない。閣外協力しているものの、英国政府のバックストップ合意に強く反対している北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は、離脱協定そのものの変更が必要とする主張を変えておらず、1月15日の採決で賛成票を投じる可能性はほぼない。
メイ首相は1月14日午前に英国中西部のストーク=オン=トレントで、午後には議会で演説し、政府合意への最後の支持を訴えた。こうした中、政府合意への支持に転じる議員も出ているが、流れを変える勢いはない。与党・保守党のガレス・ジョンソン院内幹事補佐は同日、政府方針に反発して同職を辞任している。否決はほぼ確実な状況の中、離脱協定案の修正提案も与野党議員から多数提出されており、そのうち議長が最も重要と判断したものについては議会の採決にかけられる。これらの動向も、採決後のブレグジットの行方に影響を与えるものとして、得票差とともに注目されている。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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