保守党内のEU離脱強硬派と親EU派が妥協案

(英国、EU)

ロンドン発

2019年01月30日

英国議会で1月29日、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐる英国政府の新方針について、審議と修正案の採決が行われ、合意なき離脱(ノー・ディール)回避を求める案とアイルランドと北アイルランド間のバックストップの変更を求める案を賛成多数で可決した(2019年1月30日記事参照)が、保守党内で妥協に向けた動きが見られた。

キット・モルトハウス住宅計画担当閣外相らによる仲介の下、ジェイコブ・リースモグ議員らEU離脱強硬派とニッキー・モーガン元教育担当相ら親EU派が協議してまとめた妥協案では、同案を英国政府がEUと合意した離脱協定案にある永続可能なバックストップ案に置き換えて予定どおり離脱する一方、最長で2021年末まで移行期間を確保し、新たな通商関係の交渉妥結とアイルランド・北アイルランド間に物理的国境(ハードボーダー)を設けないことを確実にする。他方、離脱協定に合意できない場合は、最長で2021年末までの一時的措置としてEU規制やEU市民の権利などを維持し、従来のEUへの分担金とEUからの受給額の差額も拠出。さらにこの間、現行の無関税・割当なしの貿易を維持することなどを提案している。

この妥協案は1月29日の審議の対象にはならなかったが、関係者のツイッターや報道によると、離脱強硬派、親EU派に加え、保守党に閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)も同案への支持を表明し、メイ首相も1月29日の閣議で関心を示したという。しかし、この案はEU側が重ねて否定している離脱協定再交渉が前提であり、先端技術によるハードボーダー回避を念頭に置いた永続的なバックストップ案は、これまでの離脱交渉でEUから否定された経緯があり、EUの妥協はなお容易ではない。

メイ首相は答弁で、EUとの再協議が妥結次第、新たな合意案について議会採決を行う意向を表明。2月13日までに妥結しなければ、同日中に今後の方針を議会に提示し、翌14日に新方針の審議と修正可能な動議の採決を行うことを明言した。2週間以内の採決を目指し、メイ首相はEUとの詰めの協議に望みをつなぐ。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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