メイ首相、英国議会でのブレグジット合意採決を先送り

(英国、EU)

ロンドン発

2018年12月11日

テレーザ・メイ首相は12月10日、英国のEU離脱(ブレグジット)に関するEUとの合意をめぐり翌11日に控えた議会での採決を延期することを決めた。

メイ首相は12月10日午後の議会演説で、「重要な合意内容の多くについて広範な支持を得ている一方で、北アイルランドのバックストップに関しては(議員やその他の)幅広い層に深い懸念が残っていることは確かだ。このため、明日採決に進んでも大差で否決されるだろう」と発言。政府がまとめたEUとの合意への支持が広がっていない現実を認めた上で、採決を先送りすると明言した。

続けて首相は、12月13、14日にブリュッセルで開催される欧州理事会(EU首脳会議)に先立って現地入りし、バックストップに関する議会の懸念をめぐり、同理事会や欧州委員会の指導者らと協議する意向を表明。さらに、バックストップの発動や終了について、議会の発言権を強める考えがあることも示した。EUとの協議で何らかの譲歩を勝ち取り、再び議会に問うことで、過半数の賛成にこぎ着けたい考えだ。

しかし、EUは「再交渉はしない」というこれまでの姿勢を崩していない。欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は12月10日夜、13日の欧州理事会でブレグジットについて協議することを決定したとツイート。「バックストップを含め、再交渉はしない」と明言しつつも、英国での批准を促すための方策を協議する考えを示した。トゥスク常任議長はまた、「残り時間が少なくなっていることを踏まえ、ノー・ディールの準備についても協議する」とコメントし、安易な妥協は行わない意向を強調している。

英国議会では、野党・労働党のジェレミー・コービン党首が質疑で「政府はコントロール不能で完全な無秩序状態にある」と非難し、「再交渉を明言できないなら、首相の座を明け渡すべきだ」と迫った。

閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)のナイジェル・トッズ副党首も質疑で「首相は(バックストップが永続的なものではないというEUの)確約を得ると繰り返しているが、議会が容認できないのは、法的拘束力を持つ離脱協定の取り決めそのものだということを理解すべきだ」とメイ首相を批判している。政治宣言は微調整の可能性があるとされるが、離脱協定の文言についてのEUとの再交渉は非常に困難と考えられており、EUとの調整を経ても議会通過はなお困難だ。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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