米中が首脳会談、関税の追加的引き上げは90日間留保
(米国、中国)
ニューヨーク発
2018年12月03日
G20首脳会議が開催されていたアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで12月1日、米中首脳会談が行われた。中国との巨額な貿易赤字や米国企業に対する不公正な慣行の是正を目指すトランプ政権は、2018年3月に1974年通商法301条による制裁措置の発動を決定し、7月以降、3度にわたり、中国製品に制裁関税を賦課している。この結果、金額ベースで中国からの輸入の約半分に制裁関税が賦課されている状態になっており、これに対し、中国側も報復関税で応じ、米中間での貿易戦争に発展している。
今回の首脳会談では、米中間でエスカレートする貿易戦争に歯止めが掛かるかどうかが焦点となった。会談後のホワイトハウスの発表によると、トランプ大統領は、第3弾として2018年9月から5,745品目(2,000億ドル相当)に賦課している制裁関税の税率を、現行の10%から2019年1月1日から25%に引き上げるとしていたが、これを留保することで合意した。一方、中国は、貿易不均衡を是正するために、相当量の農産品、エネルギー製品、工業製品を米国から購入することに合意した。特に農産物については、直ちに購入を開始する。
さらに、トランプ大統領と習近平国家主席は、強制的技術移転、知的財産権の保護、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス・農業の5分野の構造的改革について、交渉を直ちに開始することで合意した。ただし、90日以内に交渉が合意に達しない場合は、前述の10%の関税率を25%に引き上げる。とりあえず、両国の貿易戦争には歯止めがかかった格好だが、90日以内に合意に達するかどうかは不透明な上、ホワイトハウスの声明には現行で課せられている制裁関税の解除について一切言及はなかった。
なお、今回の米中首脳会談の直前に、チャック・シューマー院内総務ら上院の民主党議会指導部が、トランプ大統領宛てに、中国に対して安易な合意はすべきではないと牽制する書簡を出した。11月の中間選挙で下院の多数派を占め、トランプ政権の政策への対応が注目される民主党だが、中国に対しては、今後も強硬姿勢を示していくものとみられる。
(若松勇)
(米国、中国)
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